不動産売却に当たって、不安に思われることは何でしょうか
不動産売却には、様々な段階がありますので、悩みも様々でしょう。
- 売れるまでどれぐらいの期間がかかるのか
- そもそも売れるのか
- いくらぐらいで売れるのか
- きちんとした人に買ってもらいたい
など、色々考えられます。
実際には、不動産会社任せというのが実情ではないでしょうか。
もちろん、不動産売買は専門知識が必要となりますので、不動産会社に任せていれば安心、ということもあります。
ですが、不動産会社も商売である以上、必ずしもお客様を最優先にした取り組みをしてくれるとは限りません。
そこで、今回は、不動産売却に当たり、最も気になることと思われる価格について、取り上げます。
不動産鑑定士の立場から、不動産会社の価格査定といくらで売れるのか、ということに焦点を当てて説明をしたいと思います。
1.不動産業者の査定
(1)一括査定サイトを利用するかどうか
通常は、不動産業者に査定してもらうことになるでしょう。
ネットを見ますと、数社から、査定をもらいましょう、というのをよくみます。
また、最近では、一括査定サイトもあります。
一括査定サイトを利用すれば、数社の査定を簡単に、手に入れることが出来ます。
数社から査定を取るのは、基本的なことであり、もちろん、そうすべきです。
ですが、その後、不動産業者から営業を受けることになりますので、多くの見積もりを取るほど、その後の対応が面倒になるかもしれません。
まずは、この不動産業者の査定について、少し詳しく考えていきたいと思います。
一括査定サイトを利用するのか、ご自身で数社選んで査定をお願いするのかは、結論としては、ご売却者様の手間を別としますと、他は変わりませんので、どちらも構いません。
あえて言うのでしたら、一括査定サイトの方が、先にも述べたとおり、手間はかかりませんので、余計な手間を掛けたくない、ということでしたら、一括査定サイトの利用をご検討下さい。。
一括査定サイトに登録している業者は、大手・中堅会社が中心となりますので、売却する不動産が、どのような地域であっても、恐らく取り扱いは可能でしょう。
(2)一括査定サイト以外
一方で、地域に精通している業者もいます。
ですので、おススメとしては、一括査定サイトと、一括査定サイトに登録されていない物件近くの不動産会社に査定をしてもらうのが、おススメです。
この場合、少なくとも数社と接触していることになりますので、その後の売り込みが面倒に感じられる方は、業者数は、慎重に検討して下さい。
2.査定結果をどう考えるか
数社から査定を取ったとしましょう。
査定結果は、全く同じということは、恐らくなく、一定のレンジに収まってはいるが、高いところもあれば、安いところもある、という結果になるのかと思われます。
物件にもよりますが、マンションの一室のような場合には、それ程、大きな開差は生じないのではないかと思います。
これは、相場が分かり易いか、そうではないかによります。
マンションは、相場が分かり易いです。
話しを簡単にするために、一番高い業者、中間の業者、一番安い業者があったとしましょう。
どの業者を選んだらいいのでしょうか。
それぞれについて、少し考えてみたいと思います。
(1)一番高い業者
査定が、一番高い業者が、魅力的に思われるかもしれません。
査定価格どおりで、売却できるのでしたら、当然、査定価格が高い業者がいいに決まっています。
ここで問題になるのが、査定価格どおりで売却できるのか、ということになります。
これは当たり前のことなのですが、査定価格どおりで売れることもあるし、そうでない場合もある、ということになります。
そうでない場合には、査定価格よりも高く売れるかもしれないですし、反対に、査定価格よりも安くなることもあります。
こう言ってしまうと、元も子もないのですが、売却価格は誰にも分かりません。
実際に売りに出してみない限り、分からないのです。
これはご理解いただけますでしょうか。
この査定価格と実際の売却価格については、後で、また触れたいと思います。
価格が高い業者にありがちなのが、売却の仲介を取得したいばかりに、高い価格を提示することです。
ですが、実際に売却の段階になると、それよりも安い申込しかなく、その申込を逃すと、売却が困難になるかもしれない、とか説明をし、しぶしぶ売却に応じてしまうことです。
極端な言い方をすれば、騙されたように感じるかもしれませんが、先にも触れましたが、実際の売却価格は誰にも分かりませんので、仕方がない、といえば仕方がないことでもあります。
ですが、こういうものだと初めから理解しておければ、納得も出来るかもしれません。
すなわち、提示された査定価格よりも、売却の成約価格は低くなる、ということです。
これは、考え方次第ですね。
何社かの一括査定サイトを見てみましたが、高値を競っていますね。
(2)一番安い業者
安い場合に、どんなことが考えられるでしょうか。
不動産業者、特に、売買、仲介を主業務としている業者は、成約しなければ、1円の利益にもなりません。
従いまして、営業担当は、成約重視とならざるを得ません。
では、どうすると成約の可能性を高められるでしょうか。
お分かりだと思いますが、価格を安くすることです。
安い方が売れやすい、というのは、ご理解いただけると思います。
売却可能性が高まる、または、早期に売却できるかもしれない、という点では、価格を安くすることにもメリットはあるかもしれませんが、売却する方からしますと、少しでも高く売りたいというのが本音の筈です。
そうしますと、業者都合で、本来であれば、もう少し高く売れたかもしれないものを、営業担当者の都合で、安く売らざるを得ない、というのは残念なことです。
このようなことから、査定価格の安い業者には、注意が必要です。
査定価格が安い業者に対しては、その価格がどのような価格なのか、聞いてみるのもいいかもしれません。
確実に売れる価格なのか、そうでないのか、その価格だと売れるまでどれぐらいの期間がかかるのか、などです。
(3)中間業者
今までの話しの流れからしますと、中間の業者にお願いするのがいいのかもしれない、と思ったかもしれません。
それも一つの方法ではありますが、必ずしも最善の選択にはなるとは限りません。
そもそも不動産業者の査定というのは、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に則って行う不動産鑑定評価とは異なり、統一的な基準はありません。
従いまして、査定価格がどういう価格なのか、ということが判明しないと、査定価格をそのまま鵜呑みにすることは出来ません。
これは、後程、説明致します。
結果的に、査定価格が中間であったとしても、その業者の考えでは、一番最初に説明した査定価格が高い業者と同じ考えの可能性もあります
すなわち、高めの価格を提示しておいて、実際には、その価格よりも安い価格でした申込が入らないので、安い価格で売却せざるを得ないことになる、ということです。
そうしますと、中間の業者も一番高い業者も同じということになる可能性があります。
3.業者の査定価格とはどのようなものなのか
それでは、業者の査定価格というのは、どのような価格なのでしょうか。
この説明の前に、不動産鑑定士による不動産鑑定評価について、少し説明させて下さい。
(1)不動産鑑定士による不動産鑑定評価
①前提(不動産鑑定評価基準)
不動産鑑定士による不動産鑑定評価は、不動産鑑定評価基準に基づいて行われます。
この不動産鑑定評価基準ですが、不動産の鑑定評価の手順を中心に、心構えなどが記載されています。
従いまして、不動産鑑定士による不動産鑑定評価は、この不動産鑑定評価基準に準拠していますので、どの不動産鑑定士が評価したとしても、前提は同じということになります。
なお、ここで注意していただきたいのが、不動産鑑定士による評価は、鑑定士同士で前提は同じになりますが、鑑定評価額は判断ですので、不動産鑑定士による評価でも価格差が生じます。
不動産業者の査定の場合には、その前提がはっきりしませんので、価格差は更に大きくなるものと推測します。
②不動産鑑定評価基準による価格の種類
査定価格の話しをしておりますので、価格について、不動産鑑定評価基準に記載されていることを、ここでは取り上げます。
不動産鑑定評価基準では、正常価格、限定価格、特定価格、特殊価格という4つの価格が定義されています。
通常は、正常価格なのですが、不動産鑑定士による評価では、求めた価格がどういう価格なのか、ということが明確です。
参考に、正常価格の定義を以下、記載します。
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。
とされています。
難しい言い方をしてますが、誤解を恐れずに、ざっくりと言ってしますと、適切な相場、と考えてもらっていいかと思います。
(2)業者の査定価格
では、業者の査定価格というのは、どういう価格なのでしょうか。
あえて言えば、先の正常価格、ということになるのでしょうが、こればかりは、業者に聞いてみなければ分かりません。
例えば、先の説明の一番安い業者を例にとりますと、早期に売却出来る価格ということになると推測されますが、そうしますと、正常価格の定義にある“合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値”ではなくなってしまいます。
これは、正常価格ではありません。
もちろん、少しでも早く売却したいので、安めでも構わない、というような条件を売り主の方でお願いしているのでしたら、それは問題ありません。
(3)業者の査定価格についての注意事項
このように、業者の査定価格は、各業者がそれぞれの立場や思惑などで、設定していますので、注意が必要です。
様々な価格帯の査定価格がありましたら、各業者にその価格はどういう価格なのか、確認してみる必要があります。
高い業者には、
- その価格で売れる可能性
- 値下げの必要はあるか
- 売却に要する期間
安い業者には
- その価格以上で売れる可能性
- 売却に要する期間
表面的な価格だけではなく、その価格の意味するところまで、把握できると、不安も軽減されるのではないでしょうか。
4.市場動向にも注意
査定価格を検証する際には、市場動向も合わせて、把握しておくと、無用なトラブルを避けられる可能性が高まります。
そうはいっても、一般の方が、不動産の市場動向を把握するのは、困難かもしれません。
もちろん、各種ニュースなどで、ご自身なりの相場観をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
それは、それで構いません。
簡単なのは、査定をお願いした業者に聞いてみることです。
聞くないようは、色々と考えられますが、今後も今の価格を維持できるのか、上がっていくのか、下がっていくのか、です。
(1)上昇基調の場合
何社かにヒアリングして、上がっていくというような回答が多いようでしたら、一番高い査定価格の業者を信頼するのが、ベストになる可能性が高いです。
上がっていく状況のなかで、安い査定をしている業者は、疑ってみる必要があります。
また、今後も上昇が予想されるのでしたら、急いで売却する必要がない限り、のんびりと構えていられます。
(2)下落基調の場合
下落基調の場合では、一倍高い業者の査定価格の信頼性を疑ってみる必要があります。
下落基調なのに、強気な価格設定ですと、市況を本当に分かっているのか、と不安にもなります。
ですが、ここで一つ注意していただきたいのが、下落基調の時には、総じて、全体的に悲観ムードが支配的になります。そうしますと、査定も過度に保守的になり過ぎて、低めの価格となってしまう可能性も考えられます。
下落基調の場合には、注意が必要です。
また、上昇基調の場合には、売却期間が長期に及んだとしても、価格が上がっていくのですから、大きな問題にはならない可能性が高いですが、下落基調の場合には、時の経過とともに、価格が下がっていってしまうので、判断が難しいところです。
5.物件によっても異なる
査定価格の差は、どんな物件でも生じますが、物件によっては、その開差の程度は、異なってくる可能性があります。
(1)査定の差が大きくはならない物件
先にも触れましたが、例えば、マンションです。ここでのマンションは、一棟のマンションではなく、区分所有となっているマンションの一部屋ということになります。
不動産には、様々なタイプがありますが、その中でも、マンションは、価格の査定が容易だと考えています。
例えば、土地(更地)も分かり易い方になりますが、土地の場合には、大きさや形状などによって、大きく価格が異なりますので、マンションよりは、価格が分かりにくいことがあります。
ですので、マンションの場合には、一番査定価格の高い業者でもいいかもしれません。
(2)査定の差が大きくなる可能性のある物件
借地権、底地などが考えられます。
これらの物件は、借地契約内容の把握などが必要となってきますので、土地やマンションと比べると、ノウハウも必要になってきます。
査定の以前に、業者によっては、引き受けてくれないかもしれません。
事務所ビルや商業施設なども、差が大きくなる可能があります。
こういった物件の査定は、不動産鑑定士に相談した方が安心です。
6.不動産鑑定士に相談する場合の注意点
最後に触れました、売却を検討してる物件は、事務所ビルであったとしましょう。
金額も大きいので、適切な査定価格を知りたいので、不動産鑑定士に相談したい、ということになったとします。
ここで一つ問題なのですが、不動産鑑定士は、ただでは評価をしてくれません。
これを少し詳しく説明しますと、不動産鑑定士に評価をお願いしますと、不動産鑑定評価書というものを発行します。
この不動産鑑定評価書の作成には、費用を要するのです。
ここが最大の注意点です。
業者の査定は無料ですが、不動産鑑定士の評価は優良です。
そこで、費用を掛けてまで、不動産鑑定士にお願いするのか、ということになってきます。
考え方として、余程特殊な物件でしたら、不動産鑑定士にお願いしてもいいかもしれません。
ですが、通常は、査定にお金はかけられないでしょう。
従いまして、業者にお願いせざるを得なくなってしまいます。
ここで一つアドバイスなのですが、宅建業も行っている不動産鑑定士(鑑定業者)に相談してみることです。
不動産鑑定しか行っていなければ、ただで評価をすることは出来ませんが、宅建業も行っている不動産鑑定士でしたら、仲介手数料をもらえればいいので、評価の部分は無料としてもらる可能性が高いです。
これは、私の推測なので、必ず上記のとおりになるとは限らないことには、注意して下さい。
ちなみに、弊社でしたら、売却のご依頼をいただけるのでしたら、査定は、当然無料にて、やらせていただきます。