相続土地国庫帰属制度が、令和5年4月27日に開始され、約8か月が経過しました。
令和5年10月3日の法務大臣の会見によると、富山県内の土地2件が、国庫への帰属を認められたそうです。
8月31日までで、申請件数が885件あったそうです。
その後、相続土地国庫帰属制度の統計によると、令和5年11月30日現在において、申請件数は1,349件となり、帰属が認められた件数は48件とっています。
10月3日の法務大臣の会見に基づくと、帰属が認められた割合は、0.23%(2件÷885件)と、ものすごく低いですが、11月30日現在では、3.56%(48件÷1,349件)と上昇しました。
随分と割合は上昇しましたが、それでも3.56%ですから、依然ハードルは高いです。
処分の困難な不動産の救済策と期待されていましたが、相続土地国庫帰属制度の利用は、実際のところ、かなり難しそうです。
そうしますと、処分困難な不動産をお持ちの方は、別の手段を検討しなければいけないのかもしれません。
1.相続土地国庫帰属制度について
詳細は、こちらをご覧いただければいいかと思いますが、ざっと説明します。
まず、国庫に帰属させたい(国に引き取ってもらいたい)土地は、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得する必要があります。
ここで、まず注意していただきたいのは、土地ということです。建物が建っていたら、国庫帰属させることができません。
先の相続又は遺贈による取得者が、承認申請をします。
その申請に対して、法務大臣(法務局)が、要件審査、承認をします。
そして、承認されましたら、申請者が負担金を納付して、国庫に帰属することになります。
特段触れませんでしたが、承認申請の際にも、お金がかかります。
審査手数料として、1筆当たり14,000円になります。筆数が多い土地ですが、審査手数料もそれなりの金額になります。
審査のお金は、不承認となっても戻って来ません。
また、どんな土地でも申請できるのではなく、国庫に帰属させることが出来ない土地というのが、下記のとおり決められています。
- 建物の存する土地
- 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路その他の他人による使用が予定される土地
- 土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
- 協会が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
更に、帰属の承認が出来ない土地というのも定められています。
- 崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を有するもの
- 土地通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
- 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
- 隣接する土地の所有者その他の者との訴訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地
- そのほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
2.承認可能な不動産
こうして見ると、帰属の承認を満たす不動産というのは、普通に売却できる不動産なのではないかと思えてきます。
処分に困っていた不動産の救世主と期待されていた方達からすると、非常に残念かと思います。
また、審査には、半年から1年程度かかるというのもネックです。
一般的に、都心の価格の高い不動産でしたら、多少の問題があっても、取引される可能性は高いです。
一方で、地方の価格水準が低い、また、ほとんど取引のないようなところでしたら、敢えて、問題のある不動産を取得することもないでしょう。
そうしますと、本制度を期待していた、価格水準が低い、あるいは、ほとんど取引のないところで、問題のある不動産を相続された方は、本制度を利用できない、というのが実態で、そもそも何のための制度だったのか、とも思えてきます。
恐らく、本制度の対象となるのは、地方の価格水準が低い、あるいは、ほとんど取引のないところで、問題のない不動産、が対象になるのかと予想されます。
3.まとめ
制度の概要を見てみると、本来この制度を期待していた方達は、実際には使うことは困難なのかと思っています。
まだ、制度は始まったばかりですので、運用を慎重に見守っていく必要があります。
また、時間がかかるのも、気になるところです。
ベストの選択は、売却だと思いますが、本制度の利用のほか、引き取り業者への引き取り等、様々なケースを、なるべく早い段階から検討していくことが、大事なのかと思います。
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