縄伸び、縄縮み、という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
聞いたことのある方からすれば、簡単なことなのですが、ご存じの無い方からすと、未知の言葉です。
言葉から、何を意味するのかを推測するのも困難ではないでしょうか。
知ってしまえば、難しいことではないのですが、実は、以外と身近なことでもありますので、御存知いただきたく、以下説明をしていきます。
1.縄伸び
(1)縄伸びとは
まず、縄伸びです。
字面のとおり、伸びた縄のことになりますが、何を意味するのでしょうか。
ご存じの方からすれば、まどろっこしいかもしれませんが、ヒントです。
伸びた縄と伸びてない縄があったとします。
少し抽象的かもしれませんので、もう少し詳しく説明しますと、本来の長さが1mであった縄が、使い続けているうちに伸びて、1.1mになったとします。
最初の1mの縄が伸びていない縄で、1.1mに伸びてしまった縄が伸びた縄となります。
仮にこの縄に、目盛りが降ってあったとしましょう。
そうしますと、伸びていない縄も伸びてしまった縄も記入されている長さは1mですが、伸びてしまった方の縄は、1mと記入されていたとしても、実際は1.1mということになります。
さて、この両方の縄を使って、面積を測定してみましょう。
話しを簡単にするために、縦と横の長さが、それぞれ1mの正方形の面積を測定します。
伸びていない縄を使うと、当たり前ですが、ともに1m同士なので、縦・横ともに1mと測定できます。
ですので、面積も1㎡となります。
では、伸びた縄で測るとどうなりますでしょうか。
伸びた縄は、1mと標記されていたとしても、実際は1.1mあります。
そうすると、先の正方形の1辺を測ると、0.91mぐらいになります。
正方形ですから、もう1辺も同じ0.91mになります。
そうすると、この測定された長さに基づいて、面積を計算すると、
0.91m×0.91mとなりますので、約0.83㎡となります。
伸びてない縄で測った場合と比較すると、0.17㎡も異なり、小さくなっていることがポイントになります。
つまり、縄伸びは、伸びた縄で測りますので、実際の面積が小さくなることをいいます。
(2)どうして縄伸びが生じるのか
昔は測量技術が未熟だった、というような理由もありますが、一番の理由は、やはり、税金を安くしたい為、ということでしょう。
江戸時代には、税金は年貢です。
土地が大きいほど、年貢も多く取られますので、面積を小さくしたい、ということは十分考えられます。
また、明治以降は、年貢ではなく、地租となりましたが、これも同様に、面積が小さい方が、地租は少なく済みます。
ですので、租税回避の為というのが、一番の理由であったと思います。
(3)今でも縄伸びは存在するのか
測量技術の進歩した現在では、縄伸びは存在する筈がない、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、今でも縄伸びの存在しています。
縄伸びしていた土地があったとしましょう。
縄伸びしているのですから、面積は実際の面積よりは小さい、ということになります。
では、測量などをして、きちんと正しい面積にしよう、ということには、普通はなりません。
なぜでしょうか。
もし、正しい大きな面積にしてしまうと、固定資産税と都市計画税が上がります。
安く済んでいる固都税を、あえて、正して、高くする、という人はあまりいないのではないかと思われます。
ですので、今でも、縄伸びは多く存在します。
ですが、そんなのは、田舎の方だけではないのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私の実務経験からの感覚になりますが、むしろ都心の方が多いように思います。
なぜだか、分かりますよね。
都心の方が、土地の値段は高いので、固都税も高くなりますので、面積を小さいままにしておくメリットが大きいのです。
そうすると、課税の平等性の観点からは、不公平にも思えます。
でも、これもドローン測量などの技術が発達すれば、近い将来改善されるのではないかと期待しています。
2.縄縮み
次に、縄縮みです。
縄伸びをご理解いただければ、簡単ですね。
縄伸びの逆になりますので、実際の面積が大きいということになります。
恥ずかしながら、私は、この縄縮には、経験したことがありません。
山林などに多い、と聞きますが、どうなのでようか。
少し調べてみますと、売買代金の嵩上げ目的、ということもあるようです。
3.まとめ
縄伸び、縄縮みについて、解説させていただきました。
極端な場合には、縄伸びしているのか、縄縮みしているのか、は分かりますが、そうでない場合には、分かりにくいことも多いです。
法務局で、謄本、地積測量図を入手できますが、かなり昔から、一度も分筆や合筆がされておらず、地積測量図がない場合には、注意した方がいいかもしれません。