賃貸物件を借りる場合、いくつかの候補物件があって、それらを比較検討して、最終的に契約する物件を決めることになると思いますが、どのように比較検討をされてますでしょうか。
賃貸住宅でしたら、まず、ご希望のエリアがあって、その中で、予算内で、可能な限り築年が新しく、設備が充実していて、最寄駅から近い物件を探す、という風になるかと思います。
賃貸オフィスや賃貸店舗でも、ほぼ同様でしょう。
なお、店舗の場合には、場所がより重視されるのかもしれません。
最寄駅から近くて、新しくて、設備が充実している方がいいのは、当然ですが、物件を探す際に、一番重要なのは、予算になるかと思います。
一般的に、駅から近くて、新しくて、設備が充実している物件は、そうでない物件と比べると、通常賃料は高めになります。
では、実際に物件を比較検討する際に、賃料をどのように見て、最終判断をしてますか。
今回は、賃料の見方と賃料の比較検討の参考になる考え方(実質賃料と支払賃料)を解説します。
1.賃料の見方
住宅と事務所に分けて、解説します。店舗は、事務所とほぼ同様と考えていただいて大丈夫ですので、今回は省略致します。
(1)住宅
住宅の場合には、チラシやネットを見ると、通常、賃料、敷金、礼金、共益費(管理費)が記載されているかと思います。
具体的にいいますと、賃料100,000円/月、敷金1ヶ月、礼金1ヶ月、共益費3,000円/月という感じです。
新築、築年の新しい物件では、敷金、礼金が2か月だったりしますし、築年が古かったり、エリアによっては、敷金、礼金は0か月の場合もあります。
共益費(管理費)は様々ですね。無い場合もありますし、ある場合には、3,000円/月~10,000円/月ぐらいです。
賃料も異なれば、共益費(管理費)も異なり、敷金、礼金も様々となると、比較検討は難しそうですね。
(2)事務所
次に、事務所です。
事務所の場合には、通常、賃料、共益費、敷金(若しくは保証金)となります。
礼金は、事務所では、あまり使われません。代わりに、敷金または保証金から償却するということが多いです。償却されるということは、戻って来ませんので、概念的には、礼金と同様です。
例えば、「保証金6か月、うち償却1ヶ月」という表記が多いですが、これは住宅で云えば、敷金5か月、礼金1ヶ月と同じ意味合いになります。
ここをご理解いただければ、後は、住宅の場合と同様です。
店舗については、省略すると、先に述べましたが、事務所では、償却があったり、無かったりしますが、店舗の場合には、特に飲食店舗の場合には、通常、償却があることが多いように思います。
ですので、店舗については、事務所と同様に考えてもらって大丈夫です。
2.実質賃料と支払賃料
次に、実質賃料と支払賃料について、説明していきます。
ここでは、住宅を例にとります。
次の2つの物件があった場合に、どちらの物件の方がお得でしょうか。部屋の大きさは、どちらも30㎡とします。
①物件A
賃料100,000円/月、敷金1か月、礼金1ヶ月、共益費3,000円/月
②物件B
賃料102,000円/月、敷金1か月、礼金0ヶ月、共益費3,000円/月
部屋の大きさは、同じ30㎡ですので、賃料だけ見ますと、物件Aの方がお得ですね。単価を計算すると、物件Aは3,330円/㎡、物件Bは3,4000円/㎡です。
他に、違いは、礼金です。物件Aは1ヶ月、物件Bはゼロ(0か月)です。
礼金は、戻ってこないお金ですので、礼金まで考慮すると、礼金がゼロの物件Bの方がお得かもしれない、と思われた方もいらっしゃるかと思います。
ここで紹介したいのが、実質賃料という考え方です。
支払賃料は、名前の通り、支払う賃料ですので、単価で云うと、物件Aは3,330円/㎡、物件Bは3,4000円/㎡です。
ですが、実際には、賃料以外にも、共益費、敷金、礼金も支払っています。実質賃料とは、支払賃料以外にも、支払った金額で、実質的に賃料を構成するものを含めたものになります。
(なお、理論的には、共益費は、実費であり、賃料を構成するものではないのですが、実際に支払う金額ですので、ここでは共益費も含めて、話を進めます。)
共益費については、賃料と同様、毎月支払うものですので、特段問題はないと思われますが、少し難しいと思われるのは、敷金と礼金です。
敷金は、先に、少し触れましたが、戻ってくるお金です。大家さんに預けますが、預かった大家さんは、敷金を運用することが出来ます。
これは、逆に、支払う側からすると運用する機会を失うことになり、その分だけ余計に賃料を支払っていることになりますので、運用益を計上します。
不動産鑑定においては、通常、運用利回りは、1.0%程度を使用することが多いです。
現下の低金利で、運用益が付くのか、とお考えになる方もいらっしゃるかと思いますが、そのようにお考えになる場合には、運用利回りは0.0%でもいいかもしれません。
色々な考え方があり、通常、大家さんは賃貸マンション、賃貸アパートを建てるに当たり、借り入れをしていますので、敷金を預かれれば、その分借り入れの返済に充てられますので、借り入れ金利見合い分を見る、という考え方もあります。
以下、運用利回りは、1.0%として、話を進めさせていただきます。
一方、礼金は、戻ってこないお金です。大家さんは、そのままもらうことが出来ます。ですので、大家さんは、もらった礼金を契約期間中に償却するとともに、契約期間中に運用もできますので、償却額と運用益を計上します。
これを計算してみたのが、下記です。
前提としまして、4年間で退去することとしています。
どうでしょうか。賃料は高くても、礼金のない物件Bの方が、若干お得になっています。若干ですので、あまり変わらない、という見方も出来ますが。
このように、実質賃料を計算することにより、見た目の支払い賃料に捉われない判断をすることが出来ます。
3.まとめ
支払賃料と実質賃料について、説明しました。
実質賃料の概念が分かると、見た目の賃料に捉われることなく判断することが出来ます。
計算シートを添付しますので、よければ活用いただければと思います。
https://fudousan-referencebook.com/wp-content/uploads/2023/11/06ea5e1eefb524d919f7909132debc16.xls
他にも、初期投資額での比較検討もあり得るかと思います。
先のとおり実質賃料がお得であったとしても、初期投資額が安い方がいい、というような考え方もあるかもしれません。
少しだけ補足しますが、4年間入居するとしますと、契約期間は2年間ですので、1度更新契約をすることになります。
更新料として、新賃料の1ヶ月を支払うのが通常ですが、更新料がない場合も、稀にあります。
更新料の有無も実質賃料に影響を与えてきますので、ご注意いただければと思います。
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