不動産を売却したい、相続の準備を進めたい、資産価値を正確に把握したい。
そんなとき、多くの方が気になるのが「この不動産はいくらぐらいなのか?」という価格に関することでしょう。その価格を知る方法の一つとして、「不動産鑑定」があります。
一般の方からしますと、仮に不動産鑑定をお願いするとしても、どうしたらいいか分からない、と思われる方が多いのではないでしょうか。また、本ブログでは、「不動産査定」と称しますが、不動産業者(宅建業者)に査定をしてもらう、という方法もあります。
更に、国や自治体が発表する「地価公示」「相続税路線価」「固定資産税評価額」などの公的評価を活用して、ご自身で査定する方法もあります。
以上、ここまでをまとめますと、価格を知る方法には、以下の3つがあります。
- 不動産鑑定士に「不動産鑑定(鑑定評価)」を依頼する
- 不動産会社に「査定(簡易査定・仲介査定)」を依頼する
- 国や自治体が発表する「地価公示」「相続税路線価」「固定資産税評価額」などの公的評価を活用して、自身で査定する

しかし、「不動産鑑定士と不動産会社のどちらに依頼すればいいのか分からない」、「不動産鑑定士の鑑定評価と不動産会社の査定は何が違うのか?」、といった疑問を抱く方も少なくありません。
これらの違いを正しく理解することで、ご自身の目的に合った評価方法を選ぶことができ、結果的により有利な売却や適正な相続対策につながります。
本記事では、
- 不動産鑑定と不動産査定の違い
- 不動産鑑定、不動産査定が必要となる具体的なケース
- それぞれの特徴
をわかりやすく解説します。
「自分のケースでは、鑑定と査定のどちらが適しているのか?」
そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までご一読ください。

1.「不動産鑑定」と「不動産査定」の違い
まず、タイトルにありますとおり、「不動産鑑定」と「不動産査定」の違いについて、解説します。
(1)「不動産鑑定」
「不動産鑑定」は、不動産鑑定士が、不動産鑑定評価基準に則っておこなうもので、「不動産鑑定」の結果は、「鑑定評価書」という成果品にまとめられます。
不動産鑑定士以外の方が、「鑑定評価書」を発行することは出来ません。不動産鑑定士の独占業務となります。
詳細は、改めて説明致します。
(2)「不動産査定」
この「不動産査定」について、きちんと定義するのは難しいところがあるのですが、ここでは、次の2つのものがあるとします。
- 不動産鑑定士が行う「不動産査定」
- 不動産会社による「査定(簡易査定・仲介査定)」
話しが複雑になりますので、本記事による「不動産査定」は、2の不動産会社による査定を前提に話しを進めますが、誤解されないように、以下1、2ともに、説明致します。
①不動産鑑定士が行う「不動産査定」
先の「不動産鑑定」で説明させていただきましたが、「不動産鑑定」は不動産鑑定評価基準に則って行われるものです。
ですが、不動産鑑定評価基準に則っることが出来ない場合、または、評価の目的などによりあえて則っらない場合があります。
不動産鑑定評価基準に則っていないので、「不動産鑑定」とは称することはできないので、「不動産鑑定」とは区別して、「不動産査定」、「不動産調査」などということがあります。
「簡易評価」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、この「簡易評価」が不動産鑑定士の行う「不動産査定」と考えてもらえればいいかと思います。
補足になりますが、不動産鑑定評価基準に則っていない場合には、「鑑定」、「評価」という文言は使用できませんので、正確には、「簡易査定」、「簡易調査」ということになります。
②不動産会社による「査定(簡易査定・仲介査定)」
もう一つは、不動産会社による査定です。
これについては、後程詳しく説明致します。

2.不動産の価格を知りたい場面
「不動産鑑定」と「不動産査定」の違いが気になるということは、不動産の価格を知りたいということがあると思います。また、不動産の価格を知りたいということは、何らかの理由や目的があるはずです。
この理由や目的により、どの方法を選択するかは変わってきます。
(1)不動産の売却
もっとも一般的なケースが、不動産を売却する際でしょう。
売主としては、少しでも高い価格で売却したい筈です。一方で、買主としては、反対に、少しでも安い価格で購入したいことが多いため、客観的な価格の指標が必要になります。
この場合、不動産業者(仲介会社)による「査定」を利用することが一般的です。
不動産業者(仲介会社)による査定は、仲介業務の一環として行ってもらえますので、費用がかからない、というのが一番の魅力です。査定の精度については、複数の不動産業者に査定を依頼することによって、担保することが可能です。
更地やマンションの一室などの、通常の不動産であれば、不動産業者による無料の査定でも問題ありませんが、権利関係の複雑な物件などの場合には、不動産鑑定士による「鑑定評価」(以下、「鑑定評価」と称します。)の活用もご検討下さい。
例えばですが、不動産業者が、普段取り扱わないような物件があったとします。不動産業者に相談しても、恐らく、不動産業者もよほど特殊な物件でない限り、“うちでは扱えない”とは言わないと思われる為、できる範囲での査定をしてくるのかと思わます。
ですが、その価格で売りに出した場合、本来の物件価格よりも低い査定でしたら、売主は損をします。反対に、本来の価格よりも高い価格でしたら、物件がなかなか売れない、ということにもなりかねません。このようなことを避けるためにも、不動産鑑定の利用を検討していただきたいです。
また、企業などで、売買にあたり、社内決済を取るため、ということでしたら、鑑定評価のほうがいいかもしれません。
不動産の売却については、こちらで整理していますので、よければ参考にして下さい。

(2)不動産の購入
先の売却のケースの逆になります。
この場合も、不動産業者にお願いしているのでしたら、購入を検討している物件の適正価格を査定してもらえばいいでしょう。
権利関係の複雑な物件、企業内決済などの目的でしたら、先と同様、「鑑定評価」をご検討下さい。
(3)相続・贈与
相続税や贈与税の申告には、相続・贈与された不動産の評価が必要となります。国税庁が定める「路線価」による評価が基本となります。
ですが、路線価による評価では反映で出来ない減価要因がある場合には、路線価による評価と「鑑定評価」では乖離が生じることがあるため、「不動産鑑定評価書」を添付することで、税金上のメリットを受けられる可能性があります。
相続人間で不動産を分割する必要がある場合にも、公正な評価額は争いを防ぐ重要な要素となりますので、「鑑定評価」の活用をおすすめしたいです。
また、相続した不動産を売却すると、譲渡所得税の支払が必要となります。この譲渡所得税の計算の際に、売却した不動産の取得価格が分からないと、取得価格は一律に5%とされ、税額が多額となってしまうことがあります。これを避ける為に、不動産鑑定を活用することも出来ます。

(4) 企業の財務や会計に関する場面
企業が保有する不動産の価値は、財務諸表上の「資産」として重要な位置づけを持ちます。特にM&A(企業の合併・買収)や減損会計、資産の再評価などを行う際には、精度の高い不動産評価が求められます。
また、事業再生といった資金調達の場面でも、信頼性のある鑑定評価が必要とされます。
(5) 借地・底地の適正価格を知りたいとき
借地権や底地に関する問題は、一般の方には判断が難しいでしょう。
更新料や名義変更料、建替承諾料、条件変更承諾料といった費用の算出にも、専門的な知識が必要です。このようなケースでは、不動産鑑定によって「適正な価格」を明示することができ、交渉を円滑に進める材料にもなります。
このような場合でも、不動産会社に相談してもいいかもしれませんが、不動産会社は売買絡みでないと対応してくれない可能性があります。また、借地・底地の取り扱い経験の乏しい業者だったりしますと、後々トラブルに発展する可能性もあります。

(6) 裁判・調停・紛争時の根拠資料として
離婚や財産分与などの民事訴訟、損害賠償請求などにおいて、不動産の価値が争点になる場合もあります。その際、不動産鑑定士による客観的な評価書は、裁判所や調停機関でも高く評価される証拠資料となります。
調停、裁判手続きなどで、価格の証明が必要となることがあり、その資料として、不動産会社の査定書を見ることがよくあります。ですが、後程説明致しますが、不動産会社の査定は、仲介業務に付随するものであり、裁判などの証拠資料として利用しますと、目的外利用となり、違法となる恐れがありますので、ご注意下さい。
(7)信託や担保評価
信託財産や金融機関が融資の際に不動産の担保評価を行うケースが考えられます。このような場面では、評価額に対する説明責任や法的根拠が求められるため、不動産鑑定士による厳密な評価が欠かせません。
(8)まとめ
ここまでのところをまとめますと、不動産の購入・売却以外の場合には、不動産鑑定士による鑑定評価を活用した方が良い、ということになります。
これは、その通りでして、不動産業者による査定は、仲介業務の一環として行えるものですので、それ以外の目的で、不動産業者による査定を利用すると、目的外利用となり、場合によっては、法律違反となる恐れもありますので、ご注意下さい。

3. 不動産の価格を知る方法は主に3種類ある
価格を知りたい場面を確認したところで、改めまして、価格を知る3つの方法について説明致します。
(1) 不動産鑑定士による「不動産鑑定(鑑定評価)」
①「不動産鑑定評価」の定義と法律上の位置付け
不動産鑑定評価とは、土地や建物といった不動産について、その経済価値を専門的かつ客観的に判定し、価格として表すことをいいます。
「不動産の鑑定評価に関する法律(不動産鑑定評価法)」及び「不動産鑑定評価基準」に基づき、「不動産の経済価値を判定し、その結果を価格として表示する行為」が「鑑定評価」と定義されています。
この鑑定評価は、単なる価格の見積もりではなく、公的・私的問わず、利害関係者にとって客観的かつ信頼に足る資料となることを目的としています。
したがって、評価に際しては、法令、経済情勢、地域要因、市場動向などを総合的に分析し、適正かつ合理的な手続きが求められます。
②不動産鑑定評価を行えるのは「不動産鑑定士」のみ
この不動産鑑定評価を行うことができるのは、国家資格である「不動産鑑定士」のみです。不動産鑑定士は、国土交通大臣の登録を受けた専門家であり、厳格な試験と実務修習を経て登録されます。
不動産鑑定士が作成する鑑定評価書は、単なる価格意見ではなく、調査・分析・評価手法に基づく裏付けのある価格判断として、公的な場面でも高い証拠力と信頼性を持ちます。
これは、民間業者が行う査定書との大きな違いであり、裁判所や税務署、金融機関などでも評価資料として正式に取り扱われるのが特徴です。
③長所と短所
不動産鑑定評価の大きな長所は、何よりもその「客観性」と「信頼性」にあります。また、先に説明させていただきましたが、どのような場面でも活用できることです。
鑑定評価書は、評価の前提条件、調査内容、分析手法、評価根拠などが詳細に記載されており、第三者が見てもその妥当性を確認できる構成になっています。
また、評価額は市場性・収益性・費用性といった複数のアプローチによって算出され、単なる相場の追認ではない「総合判断」による価格となるため、市場が不透明な状況でも合理的な指標として活用できます。
短所としては、鑑定評価には一定の費用と期間がかかることです。物件種類や評価内容にもよりますが、一般的に、20万円から50万円程度の費用がかかります。物件種類、評価の内容、評価目的によっては、それ以上の費用となることもあります。
期間は、数週間~1か月程度の時間を、通常、要します。これも、先の費用と同様で、物件種類等により、もっと長い期間を要することもありえます。
また、鑑定評価の価格は「適正価格(正常価格)」を前提としたものであり、実際の売買価格とは乖離があることもあります。
したがって、鑑定評価はあくまで「公正な判断の基礎」として捉え、市場動向や目的に応じた柔軟な活用が求められます。

(2) 不動産会社による「査定(簡易査定・仲介査定)」
①査定とは不動産会社が売却・仲介を前提に行う価格見積もり
不動産を売却したいと考えたとき、最初に多くの方が気になるのが「自分の不動産はいくらで売れるのか」という点ではないでしょうか。この「売れそうな価格」を知るために行われるのが「不動産査定」です。
不動産査定は、不動産会社が売却や仲介を前提として、市場での取引価格を見積もる行為を指します。
不動産の査定とは、売却希望者が所有する土地・建物などの不動産について、現時点で市場に出した場合にどの程度の価格で売れるかを、不動産会社が見積もることをいいます。
あくまで「仲介業者が販売を前提として提示する見込価格」であり、法的な効力はなく、公的な評価でもありません。
②査定の方法(机上査定・訪問査定)
不動産会社が行う査定には、大きく分けて次の2種類があります。
a 机上査定(簡易査定)
現地を訪問せず、物件の所在地・面積・築年数など、公開情報や資料をもとに机上で算出されるものです。依頼から1~2日で査定結果が得られるケースが多く、スピーディに価格の目安を知りたい人に向いています。
ただし、実際の状態や周辺環境が加味されていないため、正確性にはやや欠けます。
b訪問査定(詳細査定)
不動産会社の担当者が現地を訪れ、建物の劣化状況、周辺環境、眺望、日当たりなども含めて詳細に確認した上で価格を算出します。より実態に即した正確な価格が提示されるため、売却活動の開始前に行うのが望ましい方法です。

③無料で手軽に利用できるが、根拠は会社によってまちまち
不動産会社によっては独自のデータベースやAIツールを活用して査定を行うケースも増えていますが、担当者の経験や知識による「目利き力」も重要な要素となります。この点で、不動産会社の選択が重要なポイントになってきます。
ですが、これは、複数の業者に見積を依頼することによって、選択ミスを回避することが出来ます。
一方で、不動産鑑定士による不動産鑑定評価は、不動産鑑定評価基準に則って行われるため、統一的な基準、根拠に基づいているということで安心できます。
④長所と短所
長所は、先の不動産鑑定とは異なり、無料であるということでしょう。
短所は、いくつか考えられますが、一番大きな短所は、仲介を目的とした営業的側面もあるとうことでしょう。鑑定評価では、評価料をもらっていますので、問題ありませんが、不動産会社の査定では、査定の次に控えている仲介業務を受託しないと、一銭にもなりません。
ですので、査定をお願いすると、不動産会社から営業を受けることは仕方がないとも言えます。不動産会社に査定をお願いする際には、この点を十分に理解してからお願いするようにしましょう。
以下についても、注意したいところです。
- 査定価格だけで判断せず、説明の根拠や対応の丁寧さを重視する
- 複数社に査定を依頼し、価格や提案を比較する
- 「相場より高すぎる査定価格」は疑ってかかる(媒介獲得目的のケースも)
信頼できる不動産会社に依頼することが、納得できる売却につながります。また、不動産会社の選択も重要ですが、担当者によって、対応などが大きく変わってきますので、担当者選びも重要になります。

(3)公的評価を活用して自身で査定する
3つめの公的評価を活用して自身で査定する方法になります。
この場合の大前提として、恐らくは、売買を検討しているが、まだ、具体的に動く段階ではない、ざっくりと不動産価格を知りたい、ということになるのかと推測します。不動産投資のシュミレーションということもあるでしょう。
先の不動産会社の査定の所で触れましたが、不動産会社に査定をしますと、その後、営業活動を受けることになるでしょう。
また、大まかな目安を知りたいだけなので、不動産鑑定士にお金を払ってお願いをするような状況でもない、ということになるかと思います。
①公的評価の種類
公的評価には、地価公示・地価調査、相続税路線価、固定資産税路線価、固定資産税評価額があります。
a.地価公示(公示地)・地価調査(基準地)
地価公示と地価調査は、地価公示は1月1日時点、地価調査は7月1日時点の価格という違いはありますが、それ以外は同様です。具体の地点を定めて、その地点の更地としての価格を表しています。国土交通省のホームページから、地価公示・地価調査地点を探すことが出来ます。
活用方法としては、地図などから、調べたい地点の近くにある公示地、基準地を探して、比較するということになるかと思います。
近くにあれば、分かりやすいのですが、必ずしも、お調べの地点の近くにあるとは限りませんので、そのような場合には、活用しづらいかもしれません。また、近くにあったとしても、商業地などで、大通りとその裏通りでは、価格水準が全く異なることもあるため、不動産の知識がない方には、参考とすることが難しいかもしれません。
地価公示と地価調査の活用で、気を付けていただきたいのが、後の相続税路線価、固定資産税路線価と異なり、実際の土地の価格となっていることです。公示が角地でしたら、角地を反映した価格となっており、不整形地でしたら、不整形を反映した価格になっているということです。

b.相続税路線価
価格の査定に際して、一番おすすめしたいのが、この相続税路線価です。
見て貰えればいいのですが、各道路に、路線価が付ってあります。調べたい土地が接する道路の路線価をみれば、価格が分かりますので、とても活用しやすいです。
路線価の活用で、気をつけていただきたいことが、2つあります。
1つは、相続税路線価は、相続税、贈与税の算定のために活用されるものですので、路線価は時価を表している訳ではないことです。
路線価は、公示価格の80%になるように付設されています。従いまして、お調べの土地の路線価がありましたら、これを0.8で割り戻しますと、公示価格水準の価格となります。
2つめは、先の地価公示等とは異なり、相続税路線価(固定資産税路線価も同様)は、実際の土地の価格ではなく、標準的な土地の価格となっていることです。お調べの土地が角地でしたら、角地によるプラスを別途考慮する必要があります。
なお、極端に規模が大きい、不整形の程度が著しいような場合には、相続税路線価から、価格を推定することは困難になるかもしれません。

c.固定資産税路線価
固定資産税路線価については、基本的には、先の相続税路線価と同様です。
気を付けていただきたいのは、固定資産税路線価は固定資産税の評価のために、行われていることから、相続税路線価と同様に、時価を表している訳ではありません。
固定資産税路線価は、公示の70%となるように設定されています。固定資産税路線価のおすすめは、相続税路線価では、路線価がない地点でも、固定資産税路線価では路線価がある場合もあることです。
ですので、相続税路線価をみて、路線価がないからといって諦めるのではなく、固定資産税路線価を調べてみて下さい。
固定資産税路線価の注意点ですが、固定資産税の評価は3年に1度で、評価替えの年以外は、時点修正になることです。しかも、時点修正とは言っても、上昇の場合には据え置きとなることです。
先の相続税路線価は、毎年行われていますので、相続税路線価をメインとして使い、サブとして、固定資産税路線価を参考にする、ということがいいのではないかと考えます。
d.固定資産税評価額
所有者の方でしたら、毎年5~6月ぐらいに、東京23区でしたら、主税局、それ以外でしたら、各市町村から、固定資産税の納税通知書が送られてきます。この納税通知書に評価額を記載されていますので、この評価額から、価格の当たりを付けることが出来ます。
なお、先に説明させていただいておりますが、固定資産税の評価のための評価額ですので、時価ではないことには注意が必要です。

②公的評価活用の注意点
ここまで読まれて、疑問に思われた方もおられるかもしれません。
ここまで説明してきた地価公示・地価調査、相続税路線価、固定資産税路線価は、全て土地の価格になります。
土地の価格を知りたいということでしたら、活用できますが、戸建住宅やマンション、貸しビルなどの場合には、直接活用出来ません。
なお、固定資産税評価額には、建物の評価額も記載されており、これを参考に出来ますが、あくまで、固定資産税の課税上の評価額ですので、時価を表している訳ではないことには、注意して下さい。
戸建住宅やマンション(この場合のマンションは、一棟ではなく、一室になります。)の価格を知りたい場合にはどうすればいいのか、ということですが、最近は、インターネットで検索できますので、戸建住宅やマンションの価格でしたら、おおまかに当たりを付けることができるのではないかと考えています。
貸しビルなどになると、ある程度の評価の知識がないと、困難かと思われます。
(4)まとめ
「不動産鑑定」と「査定」の違いを表で比較しますと、以下のとおりです。
項目 | 不動産鑑定 | 不動産査定 |
実施者 | 不動産鑑定士 | 不動産会社 |
法的根拠 | 不動産の鑑定評価に関する法律 | 特に法的規制なし |
費用 | 有料(20万円〜50万円が目安) | 無料が多い |
利用目的 | 相続・税務・裁判など公的性質 | 売却・賃貸など私的な目安 |
精度 | 高い(鑑定評価書を発行) | ばらつきがある(価格幅提示) |
4.では、どうしたらいいのか
前記の説明のなかで、触れさせていただいておりますが、簡単にまとめますと、以下のとおりとなります。
- 売買以外の目的で、費用を掛けたくない場合には、ご自身で査定
- 売買目的の場合には、不動産会社の査定
- 上記以外の場合には、不動産鑑定
なお、上記のとおり杓子定規に考えるのではなく、まずは、不動産鑑定士(不動産鑑定会社)、あるいは、不動産会社に問合せをしてみるのがいいかと思います。
例えばですが、私の経営する堤不動産鑑定株式会社では、目的にかかわらず、口頭での概算価格の査定でしたら、無料でお引け受けさせていただくこともあります。
また、先にも説明させていただきましたが、不動産の価格を知りたいということは、その背景に何らかの目的がある筈です。
堤不動産鑑定株式会社でよく相談を受けるケースとして、譲渡所得税の計算に必要となる取得価格の相談があります。
相続では、相続財産が不動産だった場合に、その不動産がいくらなのか、分割する場合にどうしたらいいのか、また、売却後の譲渡所得税の計算など、様々な過程がありますが、不動産会社や不動産鑑定会社に個別に相談するのではなく、これらをまとめてお引き受け出来る不動産業と不動産鑑定業を行っている弊社のような会社にご相談をいただくと、スムーズに進められるかと思います。

5.まとめ
「不動産鑑定」と「不動産査定」について、説明させていただきました。
不動産会社は敷居が高いかもしれませんが、不動産鑑定士(不動産鑑定会社)は、そもそもの数が少ないこともあり、もっと敷居が高いかもしれません。
ですが、問合せをしてみなければ、何も始まりませんので、お気軽にお問合せいただければと思います。
参考までに、弊社HPです。