「隣の土地は、倍出してでも買え、は本当か。」の第3弾になります。
今回は、少し難しいかもしれませんが、数式も利用して、解説をしていきたいと思います。
万一、分かりにくいようでしたら、ご質問をいただければ、お答えいたします。
今回のブログをお読みいただく前に、前回と前々回のブログを、再度、ご一読いただきますと、理解が容易になるかもしれません。
1.具体例
例は、前回の説明と同じものを使用します。
土地Aと土地Bがあります。
土地Aと土地Bは、面積は同じ100㎡ですが、土地Aは、表通りに面し、角地です。
よって、土地Aの価格(単価)は、土地Bよりも高いです。
土地Aの単価を1,000,000円/㎡、土地Bの単価を500,000円/㎡とします。
面積は同じ100㎡ですので、それぞれの総額は、土地A 1.0億円、土地B 0.5億円となります。
そして、下の図ですが、土地Aと土地Bが併合した場合になります。土地Aの所有者が土地Bを購入するか、反対に、土地Bの所有者が土地Aを購入すると、土地A+Bとなります。
土地A+Bの単価は、土地Aと同じ1,000,000円/㎡とします。
2.計算方法
では、どのように計算をするのか、解説していきます。
まず、前提を整理します。
土地A | 1.0億円 |
土地B | 0.5億円 |
土地A+B | 2.0億円 |
増分価値 土地A+B-(土地A+土地B) | 0.5億円 |
土地A、土地B、土地A+Bまでは、問題ないかと思います。
増分価値という言葉が出てきました。前回のブログでも登場しましたが、今回は、きちんと説明したいと思います。
土地Aと土地Bそれぞれは、1.0億円、0.5億円ですので、土地Aと土地Bが別々の所有の場合には、その合計の1.5億円の価値になります。
一方で、土地A+Bとなれば、2.0億円となります。
この一体となった場合の価格とそれぞれを合計した価格の差額を増分価値といいます。
土地Aと土地Bが、一体となることにより、価値が上昇し、その上昇分のことです。
限定価格の計算は、この増分価値の配分方法ということになります。
この計算方法には、いくつかあるのですが、ここでは、実務で良く使われる2つの方法に触れます。
(1)総額比
まず、総額比です。
名前のとおり、それぞれの総額比で増分価値を配分する方法です。
下表のとおりとなります。
総額 | 総額比 | 増分価値の配分額 | |
土地A | 1.0億円 | 67% 1.0億円/(1.0億円+0.5億円) | 0.34億円 0.5億円×67% |
土地B | 0.5億円 | 33% 0.5億円/(1.0億円+0.5億円) | 0.16億円 0.5億円×33% |
上表で求められた増分価値の配分額を反映させますと、以下のとおりとなります。
増分価値配分後の土地価格 | 備 考 | |
土地A | 1.34億円 | 1.0億円+0.34億円 |
土地B | 0.66億円 | 0.5億円+0.16億円 |
少し説明させていただきますと、土地Aは、1.0億円から1.34億円に上昇しました。
これは、土地Bの所有者が土地Aを購入する場合には、1.0億円ではなく、1.34億円で買ってもいい、ということになります。
反対に、土地Aの所有者が、土地Bを購入する場合には、0.5億円ではなく、0.66億円で買ってもいい、ということになります。
ここで注目してもらいたいのは、土地Aは、1.0億円から1.34億円、34%の上昇、土地Bは、0.5億円から0.66億円、32%の上昇となっている点です。
例にもよるので、一概には言えませんが、ブログタイトルにある、”隣の土地は、倍出してでも買え”というのは、増部価値を配分して、土地価格が倍になることになりますが、本例からも分かるとおり、倍まで上昇するというのは、余程のケースに限られるものと推察されます。
(2)購入限度額比
特殊なケースを除けば、この購入限度額比による方法が、理論的には、正しいものと思っており、私もこの方法にて、限定価格を求めることが多いです。
ただし、先の総額比と比較する、少し、計算が複雑です。
購入限度額 | 購入限度額比 | 増分価値の配分額 | |
土地A | 1.5億円 2.0億円-0.5億円 | 60% (2.0億円-0.5億円)/{(2.0億円-1.0億円)+(2.0億円-0.5億円)} | 0.3億円 0.5億円×60% |
土地B | 1.0億円 2.0億円-1.0億円 | 40% (2.0億円-1.0億円)/{(2.0億円-1.0億円)+(2.0億円-0.5億円)} | 0.2億円 0.5億円×40% |
いきなり購入限度額とありますので、困惑されているかもしれません。
購入限度額は、買入限度額とも言われますが、相手の土地を買ってもいい限度額(最高額)になります。
土地Bの所有者が、土地Aを買う場合には、現在の土地Bが0.5億円、土地Aを購入して、土地A+Bになると2.0億円になりますので、最大で1.5億円で買っても損はしない、ということです。
反対に、土地Aの所有者が土地Bを購入する場合には、最大1.0億円で買っても損はしない、ということになります。
これを購入限度額といいますが、この比で、増分価値を配分することを購入限度額比といいます。
購入限度額比は、土地A60%、土地B40%で、この割合で、増分価値を案分すると、土地A 1.3億円、土地B 0.7億円となります。
土地Aは、30%の上昇、土地Bは40%の上昇となります。
いずれも倍には遠く及びません。
(3)調整をどうするか
2つ、説明させていただきましたが、仮に、説明させていただいた2つの方法を適用した場合、最終的な結論はどうしたらいいでしょうか。
真っ先に思い浮かぶのは、平均とすることでしょう。
これも一つの方法ではありますが、実務的には、実態に即して、個別に判断することになります。
1つの方法しか、適用しなければ、この段落で説明させていただいている調整作業は不要になります。
購入限度額比のところで触れましたが、私は、購入限度額比のみを適用し、それを結論としていることが多いです。
限定価格は、そもそも相手の土地を相場よりも高く買っても損はしない金額ですので、購入限度額はその趣旨に最も即応しているのではないかと、判断しております。
なお、他にも、単価比、面積比などもあり、実態に即して、採用する方法を検討することが重要です。
3.まとめ
3回に渡って、限定価格について説明してきました。
そもそもの出発点は、隣の土地を倍出してもいいのか、を検証する為でしたが、これについては、具体の事例にあてはめて、計算をしてみないと分かりません。
本件の例でいうと、とても倍には及ばないということが分かりました。
勿論、ケースによると思いますが、増分価値が多く発生し、その配分額が大きい場合には、倍近くになることも考えられますので、一概には否定しきれません。
なお、最後に、補足を2つさせていただきたいのですが、まず1つ目です。
具体例は、予め、こちらで設定をさせていただきましたが、実際に鑑定評価をする場合には、土地A、土地B、土地A+Bの3画地の価格を出す必要があり、これに加えて、更に、限定価格の計算をすることになります。
従いまして、限定価格の鑑定は、通常の鑑定よりも、手間がかかります。
もう一つですが、限定価格は、相手方を購入しても損をしない価格に過ぎませんので、必ずしも、通常の価格よりも高く買わなければいけない、ということではありません。
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