「隣の土地は、倍出してでも買え」、は本当か。 不動産鑑定の観点から解説します。

「隣の土地は、倍出してでも買え」ということは、聞いたことありますでしょうか。
当然、私も聞いたことがあります。
ネットを検索すると、倍どころか3倍という言い方もあるようです。

また、「借金してでも買え」というのも見ましたが、不動産は通常、融資を受けて買うものだと思いますので、何が何でも買え、という意味合いは、あまり強く感じられない感じもします。

さて、本題に戻りますが、「隣の土地は、倍出してでも買え」は、本当なのだろうか、ということを考えていきたいと思います。
結論をいいますと、不動産鑑定の立場からすると、そうかもしれないし、そうでもないかもしれない、ということになります。

もう少し詳しく言わせていただきますと、相場より高く買っていい場合もあるけれど、その場合でも2倍は高いかもしれない、というのが結論と云いますか、私の意見です。

では、以下、説明してまいります。

目次

1.隣の土地は買えるのか

専門的な話しをする前に、少し感覚的、経験的な話しをします。

不動産は、同じものは他にはない、ということは、ご理解いただけますでしょうか。

分譲地内の建売物件の場合でしたら、同じような場所に、同じような物件はありますが、それでも、同一ではありません。

隣同士の同じ面積、同じ形状の土地があったとしても、緯度、経度は異なりますので、同じ土地とは言えません。

そうしますと、隣の土地というのは、限定されてしまうということは、想像できますでしょうか。
限定されるとしましても、隣と云えば、両隣とかがありえますので、必ずしも一つではないかもしれませんが。

仮に、一つではないとしても、隣の土地が必ずしも売りに出ている訳ではありません。

隣の土地というのは、そもそも限定的で、その限定されている土地が、必ず売りに出ている訳ではない、ということになります。

そうすると、隣の土地を買う機会というのは、極めて稀になります。
売りに出ていなければ、当然買うことは出来ません。
また売る気のない隣の人に土地を売って下さい、と言っても、売ってくれるかどうかは分かりません、というよりは、売ってはくれないでしょう。

このような隣地の希少性から、高く買ってもいいかもしれない、というのは、感覚的には、ご理解いただけるかと思います。
人気の高いエリアなどを除けば、売り物件は、多数ありますので、隣でなければ、十分相場で購入することが出来ます。

なので、どうしても隣の土地が欲しければ、倍は高いかもしれないけれど、相場より高く買ってもいいのかもしれない、ということになります。
別の見方をすれば、他に、その土地を欲しい人がいるかもしれないので、他の人よりも高いお金を出さなければ、買えないかもしれない、ということです。

2.限定価格

先に、限定的、という文言を何度か使いました。
不動産鑑定の用語になりますが、隣の土地を高く買う(高く買ってもいい)場合の価格を限定価格といいます。

かなり砕けた説明になりますが、お隣さん同士という限定された市場で成り立つ価格なので、「限定価格」になる、というとイメージし易いでしょうか。
不動産鑑定では、専門的な定義がありますが、少し難しくなりますので、ここでは割愛します。
観念的には、上記の理解で十分です。

ですが、不動産鑑定の立場からすると、隣の土地を高く買ってもいい場合と、そうでない場合がある、ということは先に少し触れました。
これは、言い換えると、隣の土地を買うからと云って、「限定価格になる(高くなる)場合」と「ならない場合」がある、と言い換えられます。

少し、話がずれますが、限定価格にならない場合の価格を「正常価格」といいます。正常価格は、誤解を恐れずに、簡単に云ってしまうと、相場という理解でいいでしょう。
正常価格も、不動産鑑定用語となりますので、定義はここでは割愛致します。

3.限定価格になる場合とならない場合

では、どういう場合に、限定価格になるのでしょうか。
これは、色々なケースがありますが、隣を買うことによって、既に持っていた土地の価値が増加する場合ということになります。
例を挙げると、以下のような場合があります。

  • 間口が広がる
  • 角地になる
  • 不整形地から整形地になる
  • 無道路地であったが、道路に通じるようになる

などが挙げられます。
上記のような場合には、隣の土地を相場よりも高く買ってもいい、ということになります。

反対に、隣の土地を買っても、価値が増加しない、あるいは、むしろ価値が減少するような場合には、高くは買えないですね。
例えば、隣の土地を買うことによって、形が悪くなるような場合がそうです。


ですので、このような場合に、隣地だからと云って、高く買ってしまうと損をすることになります。
勿論、いくらで買うかは、個人の自由ですので、高い価格で買ったとしても、納得しているのであれば、問題はありません。

4.まとめ

以上、「隣の土地は、倍出してでも買え」について、不動産鑑定の見地から、説明させていただきました。

今回は、限定価格について、イメージしてもらえるよう、やや感覚的な話しをさせていただきましたが、別のブログにて、限定価格を理論的に説明した続編を書かせていただいておりますので、そちらも参考にしていただけたらと思います。

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この記事を書いた人

東京都中央区日本橋室町にて、不動産、不動産鑑定会社である堤不動産鑑定株式会社を経営しています。
会社ホームページはこちらです。
https://www.tappraisal.co.jp/

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