隣の土地は3倍(2倍)出してでも買え、隣の土地は借金してでも買え、といった隣地購入に関する格言があります。反対に、ネットで検索してみると、隣の土地は買ってはいけない、という文言も目にします。
どちらが本当なのでしょうか。
この記事を読んで下さっている皆様は、隣地購入について、悩まれておられるのだろうと思います。
- 隣地が売りに出ている
- 隣地所有者から買わないかという相談を受けている
のかもしれません。
本ブログ記事は、このように隣地購入に悩まれている方に向けて
- 隣の土地は3倍(2倍)出してでも買えは本当なのか
- 本当だとすれば、隣地購入する際の大まかな目安
をお伝えします。
隣地をいくらで買ったらいいのかは、厳密には、不動産鑑定の知識が必要となります。また、計算も必要で、一般の方には、少し難しいかもしれません。
そのため、大雑把にはなりますが、難しい理論と計算を可能な限り省いた目安を知る方法をお伝え致します。
本ブログ記事をお読みになれば、ご自身で隣地購入の可否を判断できるようになります。

この記事を読んで分かること
- 格言は一概に正しいとは限らない
- 高値購入は増分価値の有無で判断
- 上限は通常1.5倍程度が目安
- 2~3倍は特殊ケースのみ
- 価値増がなければ相場以下も検討
結論 隣の土地は3倍(2倍)出してでも買えは本当か
まず、結論をお伝えします。
私の今までの実務経験に基づく判断ですが、隣の土地を高く買うとしても、
- 相場の1.5倍程度が通常の上限
- 2~3倍となるのはかなり特殊な場合
となります。
言い換えますと、隣の土地は高く買っていいこともあるが、2~3倍になるのは特殊な場合に限定される、ということになります。
しかも、1.5倍などで買っていいのは、後に説明する増分価値が生じる場合です。隣地だからということだけで、高く買ってはいけません。まず、増分価値が生じるかどうかを判定することが先決になります。
なお、誤解をして欲しくないのですが、増分価値が生じる場合にだけ高く買っていいというのは、経済的な判断です。
大きな土地を持っているということはステータスになるかもしれません。ですので、損得抜きで、大きな土地が欲しい、というのでしたら、2倍、あるいは3倍で買っても構いません。
以下、どのような場合に、増分価値が生じるのか、説明していきます。

増分価値が生じる場合
それでは、増分価値が生じる場合について説明していきます。
増分価値とは
増分価値の説明に当たり、増分価値が生じる具体例を取り上げて、解説します。
増分価値が生じる例
まず、増分価値について説明します。分かりやすい例として、隣地を取得して、角地になる場合を取り上げます。
下図のとおりです。

それぞれの面積と土地価格は以下のとおりです。
| 面積 | 土地単価 | 土地総額 | |
| 対象地 | 100㎡ | 1,000,000円/㎡ | 1.0億円 |
| 隣地 | 100㎡ | 1,100,000円/㎡ | 1.1億円 |
| 対象地+隣地(一体地) | 200㎡ | 1,100,000円/㎡ | 2.2億円 |
土地面積は、対象地、隣地ともに100㎡で、一体地はその合計なので200㎡となります。
土地単価は、隣地は角地なので、対象地よりも10%アップするものとします。道路による価格差はなしとします。
そうしますと、隣地の土地単価は、対象地の10%増しとなり、1,100,000円/㎡となります。一体地も角地ですので、土地単価は同様に1,100,000円/㎡とします。
増分価値の説明
前記を踏まえて、総額ベースで整理すると、以下のとおりとなります。
対象地:1.0億円、隣地:1.1億円、対象地+隣地:2.1億円
一体地:2.2億円
この総額をもとに、一体地の価格から対象地と隣地の価格を引くと、次のようになります。
一体地2.2億円-(対象地1.0億円+隣地1.1億円)=0.1億円
一体地が2.2億円で、対象地と隣地の合計が2.1億円ですので、0.1億円の差額が生じています(一体地の価格の方が0.1億円高い。)。
この差額のことを増分価値といいます。
対象地と隣地の合計は2.1億円ですが、一体になることにより2.2億円になり、増分価値が生じた、ということになります。
そうしますと、対象地の所有者が、隣地を購入する場合に、1.1億円ではなく、0.1億円を加算して、1.2億円で買ったとしても損はしない、ということになります。隣地を買えば、2.2億円になるからです。
これが増分価値の説明になります。
このように、増分価値が生じる場合には、隣地を相場より高く買ってもいい(高く買っても損はしない)、ということになります。

増分価値についての注意点2つ
注意点が2つあります。
- 1.2億円で買わなくてもいい
- 増分価値は、対象地と隣地で案分する
1つ目です。
先の説明では、隣地を1.1億円ではなく、1.2億円で買っても損はしない、と説明しました。
これは勘違いをして欲しくないのですが、1.2億円で買っても損をしないというだけで、1.2億円で買わなければいけない、ということではありません。
1.1億円~1.2億円の間の価格であればいい、ということになります。
もう一つは、不動産鑑定の考え方では、この増分価値を対象地と隣地で案分するということです。
これに関しては、視点を隣地に移して考えると、分かりやすいです。
今までの説明を隣地側から見てみますと、隣地の所有者も対象地を1.0億円ではなく、0.1億円を加算して、1.1億円で買っても損をしない、とも言えます。対象地を買えば、2.2億円になるからです。
なので、増分価値は、一方だけに案分するのではない、ということも知っておいて下さい。(この説明は、下記の記事でしています。)

限定価格
このように隣地を取得することにより、増分価値が生じる場合には、通常の価格よりも高く買うことに合理性が認められます。
この通常の価格よりも高くなる価格のことを、不動産鑑定では、限定価格といいます。
お隣さん同士という限定された市場で成立する価格、というとイメージしやすいでしょうか。
正確な定義を知りたい方は、不動産鑑定評価基準を見てみて下さい。16ページの2.に記載されています。限定価格になる場合が3つ例示されていますが、(2)が隣の土地を買う場合になります。
隣の土地は3倍(2倍)出してでも買えは本当か①
先の例を用いて、もう少し説明させて下さい。
隣地は1.1億円で、1.2億円で買っても損はしない、ということは、これまでの説明でご理解いただいたと思います。
そうしますと、この例で言うと、約9%高く買っていい(1.2億円÷1.1億円)、ということになります。
倍には、とても及びませんね。

増分価値が生じる例
増分価値が生じる例について、先の説明とは違った例をあげて解説します。
間口が広がる場合
隣地を取得することにより間口が広がる場合です。
間口が広がることにより、土地の利用効率が上がります。商業地では、利用効率だけでなく集客面でも有利となります。

整形地になる場合
隣地を取得することによって整形地になる場合です。
整形地になることにより、土地の利用効率は上昇します。

道路に接する場合
対象地は未接道です。
隣地を取得することにより、道路に接することが可能になります。未接道では、建築が不可能ですが、隣地を取得することにより、建築が可能となります。大幅な価値上昇を見込めます。

増分価値が生じない例
増分価値が生じる例について、ご理解いただいたところで、増分価値が生じない例を解説します。
隣地を取得するからといって、必ずしも増分価値が生じるとは限りません。
相場より安く買わなければいけないこともある
ここで、一旦、復習です。
隣地を高く買っていいのは、増分価値が生じるからです。そうしますと、増分価値が生じない場合には、相場より高く買うことに、経済的な合理性はありません。
つまり、相場より高く買ってはいけない、ということになります
場合によっては、隣地を取得することにより全体の価値が減少することも考えられます。そのような場合には、むしろ相場よりも安く買わなければ、損をすることになります。
増分価値が生じない場合
では、具体例をあげて、説明していきます。
増分価値が生じない例
下図のとおりです。

それぞれの面積と土地価格は以下のとおりです。
| 面積 | 土地単価 | 土地総額 | |
| 対象地 | 100㎡ | 1,000千円/㎡ | 1.00億円 |
| 隣地 | 50㎡ | 1,000千円/㎡ | 0.50億円 |
| 対象地+隣地(一体地) | 150㎡ | 950千円/㎡ | 1.43億円 |
土地面積は、対象地は100㎡、隣地は50㎡で、一体地はその合計なので150㎡となります。
土地単価は、対象地、隣地ともに同じとし、1,000千円/㎡とします。一体地は不整形になるので、土地単価は950千円/㎡になるとします。
以上を踏まえて、総額ベースで整理すると、以下のとおりとなります。
対象地:1.00億円、隣地:0.50億円、対象地+隣地:1.50億円
一体地:1.43億円
増分価値が生じない場合の説明
一体地の価格から、対象地と隣地の価格を引くと、次のようになります。
一体地1.43億円-(対象地1.0億円+隣地0.5億円)=-0.07億円
対象地と隣地の合計が1.50億円で、一体地が1.43億円となり、0.07億円の差額が生じています。しかし、この差額は先程とは異なり、マイナスです。
それぞれの合計が1.50億円だったのに、一体になって1.43億円と一体地の価格の方が低くなっています。
増分価値が生じないどころか、一体となることによりマイナスになってしまいました。
このような場合には、高く買ってはいけない、ということになります。
増分価値が生じなくても、隣地を購入したいのでしたら、マイナスになる分だけ、安く買わなければ損をしてしまいます。

隣地購入のメリット、デメリット
増分価値が生じる場合と生じない場合について、ご理解いただいたところで、隣地購入のメリット、デメリットを整理したいと思います。
ここまでの説明でいうと、
- メリットがある場合:増分価値が生じる
- デメリットになる場合:増分価値が生じない(むしろマイナス)
ということは感覚的にご理解いただけるのではないでしょうか。

隣地購入の際の大まかな目安
ここからは、皆様が実際に悩まれているかもしれない具体のケースにどう当てはめればいいのか、を解説していきます。
具体例
最初に例をあげて説明させていただいたように、対象地、隣地、一体地について整理しましょう。
具体例として、下記のとおりとします。

面積
まず面積です。面積は、ご自身の土地(対象地)と購入しようとしている土地(隣地)の面積を調べて下さい。そして、その合計が一体地の面積です。ここまでは、問題はないかと思われます。
対象地:100㎡、隣地:100㎡
一体地:200㎡
土地価格(単価)
次に、土地の単価です。
対象地、隣地、一体地がそれぞれいくらになるかということですが、これについては、不動産評価の知識がなければ、難しいかもしれません。
ですが、ご自身が納得できる価格であればいいので、主観で決めてもらって全く問題ありません。気楽に、それぞれの土地価格を決めて下さい。
この土地価格は、路線価などから、求めてもいいですし、以下に説明をさせていただく、相対的なものでも構いません。
相対的というのは、対象地の価格を仮に1,000,000円/㎡とします。これを基準にして、隣地、一体地が高くなるようなら1,100,000円/㎡、1,200,000円/㎡とします。安くなるなら、900,000円/㎡、800,000円/㎡となります。そんなに厳密に考えなくても大丈夫です。ご自身が納得できる価格として下さい。
例えば、対象地を1,000,000円/㎡とします。対象地を基準とすると、隣地はいくらになるでしょうか。
繰り返しになりますが、ご自身の主観で構いません。ここでは、1,200,000円/㎡とします。
次に、一体地です。対象地を基準にすると、一体地はいくらになるでしょうか。一体地も隣地と同じ1,200,000円/㎡としましょう。
増分価値
総額ベースで整理しますと、
対象地:1.0億円、隣地:1.2億円
一体地:2.4億円
となります。
一体地の価格から、対象地と隣地の価格を引くと、
2.4億円-(1.0億円+1.2億円)=0.2億円
増分価値は0.2億円となります。
この増分価値を隣地に加算すると1.4億円となります。隣地は、1.2億円から1.4億円へとアップすることになります。いくら上昇したかというと17%(1.4億円÷1.2億円)です。
つまり、17%高く買っても損をしないということになります。
先にも説明しましたが、増分価値は、売主、買主で配分します。
従いまして、1.4億円は、その金額で買っても損をしないという金額であって、この金額で買わなければいけないということではないので、注意して下さい。
1.2億円~1.4億円の間で買えばいい、ということです。
増分価値が生じるとはどういうことか
増分価値が生じなければ、相場よりも高く買ってはいけない、と先に説明させていただきました。
では、増分価値が生じる、とはどういうことでしょうか。
先の説例を用いて、もう少し説明します。
先の例では、
2.4億円-(1.0億円+1.2億円)=0.2億円
となっています。
一体地から、対象地と隣地の価格を引いて、増分価値が0.2億円と求められています。対象地と隣地の合計額よりも、一体地の価格(総額)が高くなる場合に、増分価値が生じています。
増分価値が生じていますので、相場よりも高く買っていい、ということになります。
言い方を代えますと、一体地の価格(総額)が、対象地と隣地の価格と同じになる場合には、増分価値が生じないので、高く買ってはいけない。つまり、相場で買わなければいけない訳です。
更に、増分価値が生じないだけでなく、一体地の価格(総額)が、対象地と隣地の価格よりも低くなる場合には、むしろ、相場よりも安く買わなければいけない、ということになります。
理解いただけたでしょうか。
ポイント1:一体地の価格が、対象地と隣地を合計した価格よりも高くなる場合に、増分価値が生じる。
高く買っていい場合とどれぐらい高く買っていいのか
前項のとおり、相場より高く買っていいのは、増分価値が生じる場合です。
増分価値が生じるかどうかは、一体地の価格から対象地、隣地の価格を控除することによって分かります。
そして、いくらまで高く買っていいのかは、隣地の価格にこの増分価値を加算した価格が上限となります。
先の例で言うと、最大17%増しで買っていい、ということになります。
ポイント2:増分価値を加算した金額が上限額。上限額の範囲内であれば、高く買っても損をしない。
隣の土地は3倍(2倍)出してでも買えは本当か②
先の例でも、17%アップにとどまります。2倍や3倍にはとても及びません。
2倍、3倍の信憑性が怪しくなってきました。
最後に、2倍や3倍になるケースについて解説します。
検証|隣の土地は3倍(2倍)出してでも買えは本当か
それでは、隣の土地は3倍(2倍)出してでも買えは本当か、を検証していきます。
具体例は、以下のとおりです。
具体例
下記の例を取り上げます。

それぞれの面積と土地価格は以下のとおりです。
| 面積 | 土地単価 | 土地総額 | |
| 対象地 | 150㎡ | 950千円/㎡ | 1.43億円 |
| 隣地 | 50㎡ | 500千円/㎡ | 0.25億円 |
| 対象地+隣地(一体地) | 200㎡ | 1,000千円/㎡ | 2.00億円 |
ざっと見ていただいて、増分価値が生じそうだと、想像はつきますでしょうか。
対象地は隣地を取得することにより不整形が解消されます。隣地は、無道路地が解消されます。
では、本当に増分価値が生じるか、見ていきましょう。
土地面積は、対象地は150㎡、隣地は50㎡で、一体地はその合計なので200㎡となります。
土地単価は、対象地は不整形なので950千円/㎡とします。隣地は、道路に接しておらず、建築が不可能なので500千円/㎡とします。一体地は整形になるので、土地単価は1,000千円/㎡です。
増分価値が生じるか
それぞれの総額は以下のとおりとなります。
対象地:1.43億円、隣地0.25億円、合計1.68億円(対象地+隣地)
一体地:2.00億円
一体地から対象地と隣地の価格を引くと、次のとおりです。
一体地2.00億円-(対象地1.43億円+隣地0.25億円)=0.32億円
対象地と隣地の合計が1.68億円で、一体地が2.00億円です。0.32億円の増分価値が生じています。
いくらまで高く買っていいのか
対象地を基準に考えますと、隣地を増分価値の0.32億円を加算した0.57億円(0.25億円+0.32億円)で買っても損をしない、ということになります。
隣地はもともと0.25億円でした。これは、約230%(0.57億円÷0.25億円)の上昇となります。ようやく倍を超えてくれました。
これで、「隣の土地は倍出してでも買え」は嘘ではない、ということが分かりました。
しかし、これまで見てきたとおり、倍にまで至るのは、極めて限定的なケースです。
直観的な説明になりますが、本件でいえば、隣地は無道路地です。無道路地ですが、対象地の所有者が取得すれば、道路に接する土地になりますので、大幅な価値上昇が見込める、ということはご理解いただけるのかと思います。
まとめ
なるべく分かりやすい説明を心掛けたつもりでしたが、ご理解いただけたでしょうか。
隣地購入の検討をする際には、本ブログ記事を参考にしていただけますと、幸いに思います。
本ブログは、簡略的な説明に留めていますので、しっかりと理解したい方には、内容が不足しているかもしれません。下記のブログにて、今回のブログよりも詳しく説明していますので、よければ参考にしてみて下さい。

また、隣地売買は、個人間取引となることも考えられます。個人間取引の注意点についてもまとめていますので、よければ参考にして下さい。

無道路地について、少し触れましたが、理解を深めたい方は、以下のブログを参考にして下さい。

