リースバックという言葉を聞いたことはありますでしょうか。
以前に比べると、耳にする機会が増えてきたように思います。
新聞、テレビ、ネットの広告などで、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
老後の生活資金の確保などで、関心のある方、利用を検討されている方も多いかとは思いますので、今回はリースバックについて取り上げます。
1.リースバックの概要
リースバックとは、自宅を売却後、買い主に賃料を支払うことで、売却した家に住み続けることが出来るという仕組みです。
ここでは、便宜上、自宅を取り上げておりますが、本社ビルを売却して、売却後は賃料を支払って、そのビルを利用し続けることもリースバックです。
老後資金の確保で、利用を検討されることが多いかもしれませんが、住宅ローンの返済が難しくなった場合、事業資金の確保目的、などでの利用も考えられます。
仕組み自体は、それほど難しくはないかと思われます。
2.注意点
それでは、リースバックについて、どんな点を注意すればいいでしょうか。
リースバックの仕組みからすれば、2つの視点から捉えることになります。
1つは、売却時で、もう1つは、売却後の賃貸借契約の締結時です。
売却時は、売却価格に注意する必要があり、売却後の賃貸借契約の締結時には、今後支払うことになる賃料についてです。
(1)売却価格
そもそもですが、なぜリースバックが注目されるようになったのでしょうか。
先にも触れましたが、高齢者の老後資金の不安という背景は勿論ですが、不動産業者側の事情も大きいと思っています。
突然、不動産業者が出て来ましたが、リースバック実施時の買い手は、不動産業者であることが多いです。
では、不動産業者側の事情とは、何でしょうか。
新聞、ニュースなどで、目にしたこともあるかと思いますが、新築マンション価格、新築戸建価格の高騰を受け、中古マンション価格、中古戸建価格も、新築に追随して高騰しています。
このような不動産市況のもと、不動産業者が物件を割安な価格で仕入れずらくなっている、より正確に云うと、利益を上げづらくなっている、という現状があります。
そこで、不動産業者が目に着けたのが、リースバックです。
不動産業者も一般企業ですから、利潤の追求は当たり前です。
ですが、リースバックという仕組みは、一見、利用者側(売主)にメリットが大きいように感じられ、売却価格が甘くなる(安くなる)可能性があることです。
利用者側(売主)からすれば、売却することによって、即座にまとまったお金を得ることができ、その後、同じ家に住み続けられるのですから、当然ですね。
ですので、売却価格が適正な水準にあるのかどうかを、十分に調べて、納得できる金額で売却することが重要になります。
(2)賃料
こちらも、話としては、先の売却価格と同様で、同じ家に住み続けられるということで、甘い賃料設定(高い賃料)となる可能性があることです。
マンションの一室であれば、賃料相場も分かり易いのですが、中古の戸建住宅となると、一般的に賃料水準は把握しづらいことが多いので、自信がない場合には、専門家に相談した方がいいでしょう。
また、表面的な賃料に捉われず、一時金(敷金、礼金等)の多寡に気を付けた方がいいです。
3.まとめ
リースバックの概要と注意点について、説明してきました。
更に付け加えさせていただきますと、単純に、表面的な売買価格や賃料だけで、判断しないことも重要です。
例えば、売買価格が高くても、賃料が高ければ、あまり意味はありません。
反対に、売買価格が安くても、賃料が安ければ、損をすることもありません。
ですので、それぞれ単独で検討するのではなく、売買価格と賃料とを関連付けて判断することも必要です。
自宅の有効利用という観点からは、リースバックは優れた仕組みだと思われますが、先のとおり売却価格、賃料に注意をしないと、単純に売却等をした場合よりも損をすることも考えられます。
実際に、リースバックによるトラブルも起きているようです。
トラブルの内容は、不動産業者が不動産取引の知識が乏しい高齢者に、安い価格で売却させたり、高い賃料で契約するということが起きているみたいです。
宅建業法には、クーリングオフの規定がありますが、リースバックの場合、売主が宅建業者ではないことから、適用されませんので、注意が必要です。
まとまったお金を手にすることが出来て、自宅にも住み続けられる、というメリットだけに着目するのではなく、デメリットにも十分検討して、判断を見誤らないことが重要です。
トラブルを避ける為には、買い手となるであろう不動産業者の言いなりになるのではなく、業者の提示する物件価格、賃料について、きちんと説明してもらうと共に、ご自身で、物件価格、賃料について調べる必要があります。
不安なことがありましたら、専門家に相談するのが、トラブル回避にも有用だと思います。
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