借地物件は、高利回り? -敬遠しがちな借地物件について、考察します。-

借地権というと、不動産にあまり馴染みのない方からすると、敬遠したくなるかもしれません。

確かに、借地ではない物件と比較すると、借地の物件は、気を付けなければいけない点や、少し面倒なこともあります。

ですが、借地物件は、デメリットばかりではなく、メリットもあります

今回は、借地物件について、デメリット、メリットを整理して、解説していきたいと思います。

目次

1.借地物件のメリット

いきなり結論になってしまいますが、借地物件のメリットは、以下の2つです。

  • 物件価格が安い
  • 高利回りである

この2つについて、説明します。

(1)物件価格が安い

物件価格が安いということについては、2つの観点で説明します。

①借地権は、完全所有権よりも安い

これは、説明するまでもないかもしれません。

以下、説明の前提としまして、一棟の賃貸アパートを例として取り上げます。

アパートですので、土地と建物です。

借地でない場合には、土地は完全所有権借地の場合には、土地は借地権になります。

少し分かりづらいかもしれませんので、図示します。

左側が、完全所有権の場合です。

土地・建物ともに、同一人が所有しています。

一方、借地権の場合が、右側です。

土地については、借りている訳ですから、本来の土地所有者が別にいます。

この図から、イメージ出来るかと思いますが、借地権の場合には、完全所有権の土地が、借地権と底地に分解されますので、完全所有権に比べて、借地権の価格は安くなります

完全所有権の土地価格から、底地に相当する価格が切り離される、というと分かり易いでしょうか。

突然、底地という文言を使ってしまいましたが、底地とは、借地権が設定されている土地のことをいいます。

詳しくは、こちらを参照して下さい。

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②市場性が低い

市場性が低いというと、デメリットのように見えてしまうかもしれません。

先の説明で、完全所有権の場合の賃貸アパートの価格が100だったとしましょう。

そして、底地価格を切り離した借地権の場合の賃貸アパートの価格を80と、仮にします。

では、借地権の賃貸アパ―トが80で売れるかというと、実際には、70とか60になってしまうことが多いです。

理論的には、借地権の価格は、前記のようになるのですが、現実の不動産市場では、借地権は完全所有権と比較すると、市場性が低い為、価格は安くなる傾向にあります。

完全所有権の賃貸アパートと借地権の賃貸アパートがあった場合に、どちらを購入したいでしょうか。

確認するまでもなく、完全所有権ですよね。

また、借地権ですと、銀行の融資も通らないこともあります。

以上により、借地権は、完全所有権と比較すると、市場性は低下する傾向にあります。

(2)高利回りである

①借地物件の利回りはどうなるか

不動産投資をされている方でしたら、当たり前のことだと思われ、説明するまでもないことかもしれません。

先に例として挙げましたが、完全所有権のアパートと借地権のアパートがありましたら、どちらの物件を選ぶでしょうか。

当然、完全所有権ですね。

そうしますと、仮に、完全所有権と借地権ということ以外は、全く同じ物件があるとします。

完全所有権のアパートの利回りが5%だったとすると、借地権のアパートの利回りは、どうなると思いますか。

物件の所在する地域や物件の内容によって、異なってきますが、完全所有権の場合よりも、借地権の場合の利回りは高くなります

例えば、完全所有権の場合の利回りが5%であれば、借地権の場合の利回りは6%とか、7%になるということです。

完全所有権の方がいいのですから、借地権の場合には、より高利回りでないと、購入したくはないですね。

②数字を使った説明

ここまでは、感覚的な説明でしたが、少し理論的な説明をします。

先に説明させていただきましたが、借地権の場合には、完全所有権の場合よりも、物件価格は安くなります。

例として挙げさせていただいた賃貸アパートですが、完全所有権の場合の価格を100借地権の場合の価格を70とします。

年間の賃料収入は、完全所有権の場合と借地権の場合とで、異なりませんので、ともに10とします。

一方、費用面ですが、完全所有権の場合の管理、修繕、公租公課等の費用は3とします。

ここで注意していただきたいのですが、完全所有権と借地権の場合とで、費用面で異なるところが1点あります。

土地の公租公課と地代(借地料)です。

完全所有権の場合には、土地の公租公課で、借地権の場合には、土地の公租公課の代わりに地代となります。

通常、地代は、土地の公租公課よりも高いです。

従いまして、借地権の場合の費用を4とします。

なお、建物は、借地人が所有していますので、完全所有権の場合でも、借地権の場合でも、同様に建物の公租公課がかかります。

これを整理すると以下のとおりとなります。

完全所有権の場合:(10-3)÷100≒0.070(7.0%)

借地権の場合  :(10-4)÷70≒0.086(8.6%)

借地権の方が、高利回りですね。

1.5%しか変わらないのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、計算を分かり易くするために、切りのいい数字にしている影響もあります。

先に触れましたが、完全所有権と借地権の場合とで異なるのは、土地の公租公課と地代です。

設例では、費用を3と4としており、借地権の場合に費用が30%以上も上昇しています。

実際には、土地の公租公課が地代になったからといって、費用がこんなに上昇することはありませんので、借地権の場合には、もっと利回りは高くなる筈です。

2.借地物件のデメリット

借地物件のメリットについて、最初に見ましたが、デメリットについても、きちんと把握する必要があります。

デメリットは、メリットの反対となるのですが、どうして、物件価格が安くなり、利回りが高くなるのになるのでしょうか。

  • 市場性が低い
  • 権利関係が複雑

主に、上記2つの要素があるからですね。

2つとしておりますが、それぞれ全く別個のものではなく、関連していますので、1ついう見方も出来ます。

以下、説明していきます。

(1)市場性が低い

これは、先に説明させていただきました。

借地権は、安く買えるというのは、メリットですが、なぜ安いのか、というと市場性が低いというデメリットがあるからです。

ですが、このデメリットも考え方によっては、デメリットではなくなる可能性もあり、それについては、後程触れたいと思います。

(2)権利関係、手続きが複雑

なぜ借地権の市場性が低いのか、というと、権利関係が複雑だから、という見方も出来、そうしますと、借地権のデメリットは、権利関係が複雑ということに、行きつきます。

借地権は、地主(土地所有者)と借地人との間で、借地契約が締結されています。

借地契約には、地代(賃料)契約期間契約目的などが定められています。

借地契約中は、地代を支払い、契約期間が満了した場合には、更新契約をすることになりますが、更新料を支払うことになる場合が多いです。

更には、借地権を売却する場合には、地主の承諾が必要となり、譲渡承諾料が必要となります。

また、建物を建て替える際には、建替承諾料が必要となり、用途変更等をする場合には、条件変更承諾料が必要となります。

このように、借地権は完全所有権とは異なる様々な手続き等が必要となることが、敬遠される最大の原因でしょう。

3.デメリットの解消方法

借地権のメリットとデメリットについて、整理しましたが、借地権は面倒だという気持ちの方が強くなられた方もいらっしゃるかもしれません。

ここでは、デメリットを解消、もしくは、改善する方法について、説明をさせていただきます。

結論をまず述べますが、2つあります。

  • 底地を売ってもらう
  • 地主に借地権を買ってもらう

それぞれ真逆のことになりますが、根本的な考え方は同じです。

先に掲載した図を見ていただきたいのですが、借地権の場合には、土地が借地権と底地に分解されます。

分解されたことにより、権利関係、手続きが複雑になるのですから、借地権と底地を併合して、完全所有権の土地にしてしまえばいいのです。

底地を売ってもらえれば、借地権から完全所有権となりますので、先に述べた借地権のデメリットはなくなります

借地権を買ってもらう場合には、地主の意思次第というところもありますが、第三者に売却するよりも容易です

いきなり地主に売ってくれ、買ってくれといっても、困惑されるだけかもしれませんので、日頃から、親密に接触を取っていくことがポイントになります。

4.まとめ

敬遠されがちな、借地物件について、説明をさせていただきました。

メリットとデメリットは、考え方次第というところなのですが、借地の物件は、競合も少ないことから、比較的割安に物件を取得できるのはないかと考えております。

前記説明中、借地権の種類について、特段触れませんでしたが、定期借地権ではなく、旧法借地権、借地借家法による普通借地権が該当します。

このことも、借地権を難しくしている原因の一つですね。

機会を改めまして、借地権そのものについて、解説をしたいと思います。

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