今回のブログは、建物の賃貸借契約に関することになります。
建物の賃貸借契約についてですが、定期借家契約についての注意事項です。
中でも、店舗、事務所などの非住宅用途で借りている方々へのアドバイスとなります。
ですが、住宅を借りている方にも参考にはなりますので、最後までお読みいただければと思います。

1.定期借家契約への切り替えはオススメしません
タイトルにも記載させていただきましたが、あえて、ここで繰り返し述べさせていただきます。
契約の更新時などに、ビルオーナー、若しくは、管理会社から、定期借家契約への切り替えをお願い、または、提案されることがあります。
ですが、絶対に、定期借家契約へ切り替えてはダメです。
安易に普通借家契約から定期借家契約へ切り替えて、後々、大変な目に合ったテナントがたくさんいらっしゃいます。
通常、定期借家契約への切り替えをお願いされた時には、家賃の減額なども合わせて提案されることがあります。
この家賃の減額という目先の利益に惑わされて、定期借家契約へ切り替えてしまうケースが多々あります。
一部の例外を除き、定期借家契約へ切り替えることは、オススメしません。
以下、説明していきます。

2.普通借家契約か定期借家契約か
まず、今回対象になる方を整理します。
最初に、店舗、事務所などの非住宅用途で賃借している方と述べました。
更に、現在、定期借家契約ではない、普通借家契約で賃貸借契約を締結している方に向けた内容となります。
これから賃貸物件を借りようという方には、今回の内容は、直接的には関わりのないことになります。
これから借りる方であっても、いずれ今回説明させていただく内容のことが起こりうる可能性もありますので、頭の片隅に、記憶を留めてもらうと、今後の損失を避けられるかもしれません。
少し脱線しましたが、改めて整理させていただきますと、今回のブログの直接の対象になる方は、賃貸物件を既に借りている方で、その建物賃貸借契約が、普通借家契約の方になります。
もともと定期借家契約が借りている方、当初は普通借家契約ではあったけれども、既に定期借家契約に切り換えた方は、今回のブログはお役に立ちません。

3.これから物件を借りる方へ
本題に入る前に、少し寄り道になります。
今回直接関係のない、これから借りる方に向けてですが、借りたい物件が定期借家契約であったとします。
普通借家契約にするか定期借家契約にするかは、物件を貸すオーナーが決めることですので、募集に出ている物件が定期借家契約であった場合、普通借家契約にして欲しい、と言っても、まず無理でしょう。
ですが、オーナーによっては、どんな入居者が分からないので、最初の契約期間は定期借家契約として、問題がなければ、再契約時に、普通借家契約とすることもありますので、確認をしてみましょう。
賃料が同じであれば、定期借家契約よりも、普通借家契約の方が、メリットが大きいです。
ですので、なるべく普通借家契約で契約した方がいいです。

4.定期借家契約へ切り替える理由
本題へと移っていきますが、どんな時に、定期借家契約への切り替えを提案されるのでしょうか。
大きな理由としては、現在入居している方に、退去をしてもらいたいからです。
定期借家契約は、再契約を可としていることが多いですが、可能なだけで、必ずしも再契約出来るとは限りません。
従って、再契約をしなければ、契約終了時に、テナントに退去をしてもらうことが可能となるので、退去を迫る手段の一つとして、定期借家契約への切り替えがあります。
では、なぜテナントに退去をしてもらいたいのでしょうか。
これは2つあります。
一つは、建物を取り壊したいので、その為に退去をしてもらうため。
古い建物に入居していると、その可能性があります。
もう一つは、現在のテナントの賃料が安く、今後の値上げも困難な場合。
このような場合に、定期借家契約への切り替えを提案されることがあります。
ですが、ただ定期借家契約への切り替えを提案しても、承諾してもらえないことが多いので、その代わりに、家賃を下げるということも合わせて、提案されます。
この家賃減額に飛びついて、定期借家契約への切り替えを承諾され、後で後悔される方がたくさんおられます。
何故、後悔されるのでしょうか。
定期借家契約は期限が来たら、借家契約は終了します。オーナーが再契約を拒んだら、契約は終了となり、他に転居しなければいけません。
転居をするとしても、同じような場所に現在の物件と同じような物件が見つかることは、特に店舗の場合には、難しいことも多く、新たに借りる際の家賃は、現在の家賃よりも高額であることがあります。
結果、希望の物件が見つからず、希望外のエリアに転出するか、最悪の場合、閉店を余儀なくされます。
従いまして、今後も現在の場所で、事業を続けたい場合には、定期借家契約へ切り替えては、絶対にいけません。

5.定期借家契約に切り換えてもいい場合
一部の例外を除いて、と先に説明させていただきましたが、それはどのような場合でしょうか。
既にお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。
いずれ退去する予定がある方です。
いずれ退去されるのでしたら、定期借家契約に切り換えることにより、賃料を下げてもらえるのでしたら、定期借家契約に切り換えてもいいでしょう。
また、現在の賃料を下げてもらいたい場合に、その交渉材料として、定期借家契約への切り替えを、テナント側から提案することも有効かもしれません。

6.オーナーの方へ
ここまでは、入居中のテナントへ向けての話しになりますが、オーナー側からすればどうなるでしょうか。
テナントの場合の反対になりますので、テナントを退去させたいのでしたら、積極的に、定期借家契約への切り替えを検討すべきです。
既に、触れてはおりますが、ただ定期借家契約への切り替えを提案しても、了承してもらえないかもしれませんので、ある程度の賃料の減額は用意する必要はあるかと思います。
7.まとめ
今後も現在の場所を借り続けたいというのでしたら、定期借家契約への切り替えを承諾してはいけません。
最後になりますが、私が聞いた話しをとりあげます。
その方は、とても人気のあるエリアの好立地の場所で、居酒屋を経営していました。
私もそのお店に行ったことがあります。
何度目かの訪問時に、今度転居をする、という話しを聞きました。
更に詳しく話しを聞くと、不動産会社が賃料を下げてくれるというので、それに飛びつき、定期借家契約への切り換えてしまいました。
その時は、賃料を下げてくれるというので、定期借家契約ということは良く考えなかったということだそうです。
そもそもきちんと説明があったのかも疑問です。
契約の終了が近づき、再契約不可ということになり、驚いて代替物件を探しましたが、いい物件は見つからず、現在の物件よりも、立地としてはかなり劣る場所に移転しました。
その場所は、立地も悪く、間取も劣り、以前よりも、大幅に小さな物件でした。
人気の高いエリアなので、空き店舗はほとんどない為、仕方ありませんでした。
ですが、数年もすると、お店は閉店してしまいました。
その時は、話しを聞きませんでしたが、恐らく、立地が良くないので、商売が上手く行かなかったのだと推測しています。
この例を参考に、定期借家契約への切り替えは、慎重に行ってください。
