はじめに:重要事項説明書とは?
不動産を購入する際、契約前に必ず交付されるのが「重要事項説明書」です。これは宅地建物取引業法に基づき、宅地建物取引士が買主に対して物件の重要な情報を説明するための法定書類です。
この書類には、物件の権利関係、法令制限、管理状況、契約解除の条件など、購入後のトラブルを防ぐための情報が網羅されています。契約前にこれらを確認することで、購入判断の材料となり、後悔のない不動産取引が可能になります。
しかし、初心者の方にとっては「専門用語が多くてよくわからない」「不動産会社に任せておけば安心」と思いがちです。実際に、重要事項説明書をしっかり読まずに契約してしまい、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも少なくありません。
重要事項説明書は、単なる説明書ではなく、契約の前提条件を明示する法的な文書です。宅地建物取引士が説明する義務を負っているのは、その重要性ゆえです。つまり、この書類を理解することが、安心して不動産を購入するための第一歩なのです。
本記事では、不動産購入初心者が絶対に確認すべき10のチェック項目を中心に、重要事項説明書の読み方や注意点をわかりやすく解説していきます。
このブログを読んで分かること
- 重要事項説明書の基本的な役割と法的な意味
- 初心者が確認すべき10の重要ポイント
- 契約解除やローン特約の注意点
- 契約不適合責任とそのリスク
- よくある失敗事例とその教訓
- 信頼できる不動産会社・宅建士の見極め方

なぜ重要事項説明書が重要なのか
不動産の購入は、多くの人にとって人生で最も高額な買い物です。にもかかわらず、契約前に交付される「重要事項説明書」をしっかり読み込まずに契約してしまう方が少なくありません。
この書類には、購入後のトラブルを未然に防ぐための重要な情報が詰まっています。たとえば、以下のような内容が記載されています:
- 物件の権利関係(所有権・抵当権など)
- 法令による制限(建築制限や用途地域など)
- 管理費や修繕積立金(マンションの場合)
- 契約解除の条件や違約金の取り決め
これらの情報を正しく理解せずに契約してしまうと、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
たとえば、再建築不可の土地を知らずに購入してしまった場合、将来的に建て替えができず、資産価値が大きく下がる可能性があります。また、抵当権がついている物件を購入した場合、売主のローンが完済されなければ、所有権移転ができないというリスクもあります。
さらに、境界が未確定の土地では、隣地とのトラブルに発展する可能性があり、測量費用や境界確定の手続きに時間と費用がかかることもあります。こうしたリスクは、重要事項説明書を通じて事前に把握することが可能です。
重要事項説明書は、契約の前提条件を明示する法的な文書であり、宅地建物取引士が説明する義務を負っています。説明を受ける際には、わからないことを遠慮せずに質問し、納得できるまで確認することが大切です。
初心者の方にとっては難解な部分も多いかもしれませんが、「わからないまま契約しない」ことが、後悔しない不動産購入の第一歩です。重要事項説明書は、安心して契約するための“最後の砦”とも言える存在なのです。
初心者が絶対に確認すべき10のチェック項目
重要事項説明書には、物件の基本情報から契約条件、法的制限まで幅広い内容が記載されています。初心者の方がすべてを理解するのは難しいかもしれませんが、最低限、以下の10項目は必ず確認しておきたいポイントです。

① 物件の所在地・面積・構造
まず確認すべきは、物件の基本情報である所在、面積、構造です。
所在地が登記簿と一致しているか、面積は登記簿面積か実測か、構造は木造・鉄骨造・RC造など何か。これらは絶対に違ってはいけないことですが、重要事項説明書の作成者も人間です。万一の間違いもあります。ご自身でチェックをするぐらいのつもりで説明を受けましょう。
特に重視したいのは、面積です。
土地の場合ですが、登記簿面積と実測面積に違いあった場合には、その相違をはっきりさせて下さい。
例えばですが、敷地面積の最低限度の規制がある場合です。物件の面積が最低限度の面積を下回っていると建築できないといったことが起こり得ます。登記簿面積では、最低限度以上の面積となっていても、実測面積が下回るということも考えられます。後の「③用途地域・建築制限」と合わせて、チェックしましょう。
建物の場合には、建築面積や延床面積のチェックも必要です。場所ごとに、建ぺい率、容積率の定めがあり、建築可能な建築面積、延床面積が決まっていますので、これらをオーバーしている場合には、違反建築物の可能性があります。このような場合、是正が必要となる場合や、違反建築物ということで、金融機関から融資を受けられないといったことも考えられます。
また、中古物件では、建物増改築により、建物の登記簿面積と実際の面積が異なるケースもありますので、注意が必要です。

② 登記簿上の権利関係(所有権・抵当権など)
まず確認すべきは所有権であり、現在の所有者です。すなわち売主ですね。
売主が1名がであればいいのですが、共有名義となっている場合には注意して下さい。共有名義の場合は、売却には他の共有者の同意も必要となり、その同意が確実に取れるのか、確認して下さい。
共有となっていても、夫婦などの場合には、それほど気にする必要はないかもしれません。
共有に絡んで、少し稀なケースにはなりますが、万一、共有持分の売買ということでしたら要注意です。このような物件は、初心者が手を出すべきではありません。共有持分は持分に応じた利用が可能ではありますが、実際には、制限を受けることが多いです。再度、売却しようとした場合には、売却が困難となることも考えられます。
所有権の次に、確認しておきたいのは、抵当権です。
抵当権が設定され、抵当権が残っている場合、売主のローンが完済されない限り、買主に所有権が移転できません。
抵当権が設定されていても、通常は、売買金額で売主のローン残額を清算するので、問題がないことが多いですが、万一のこともありますので、注意しておいて下さい。
他には、地役権などの権利が付着している場合があります。地役権の代表的な例としては、送電線設置のためのものです。現地を見たときに、物件上に送電線があったにもかかわらず、説明がない場合には、確認してみてください。
③ 用途地域・建築制限
物件が所在する地域には、都市計画法に基づく「用途地域」が定められており、建築できる建物の種類や規模に制限があります。たとえば、第一種低層住居専用地域では高層マンションの建築ができません。
また、建ぺい率や容積率の制限も重要です。これらの数値によって、敷地に対してどれだけの建物が建てられるかが決まります。
マンションの一室の売買の場合には、それほど気にする必要はないでしょう。
一番注意を払う必要があるのは、土地の場合です。
土地を取得した場合には、建物を建てるのが通常でしょう。土地を取得する際には、何等かの目的がある筈で、その目的の建物が建てられなかったら、大損害です。また、建ぺい率、容積率等により建てられる建物の規模も制限されます。
これらを踏まえ、建築したい建物が、きちんと建てられるのかどうかは、絶対に確認して下さい。
次いで、戸建住宅の場合です。
戸建住宅の場合は、新築であれ、中古であれ、すぐに建て替えということはないかと思われます。
建て替えとはいかないでまでも、増改築を検討されている方もいるかもしれません。この場合には、増改築が可能かどうかを調べておく必要があります。
築古の中古戸建を取得し、いずれ建て替えを検討しているような場合もあるでしょう。将来の建て替えの時点で、都市計画法や建築基準法の法改正があった場合には、仕方ありませんが、現在の法律に基づいて、建て替えが出来るのかどうかは確認しておいてもらいたいところです。

④ 道路の接道状況と幅員
都市計画区域及び準都市計画区域内では、建築基準法により、原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していないと建物を建てることができません。これを「接道義務」と呼びます。
接道状況が満たせない場合、建築不可となる可能性があります。特に古い住宅地では、私道や位置指定道路など、一般の方には判断が難しい道路が絡むこともあります。重要事項説明書では、接道の種類や幅員、方位などが記載されているため、必ず確認しましょう。
また、先の面積と関係するところですが、例えば、前面道路が42条2項道路に指定されていて、その道路の幅員が4m未満であった場合、道路後退が必要となります。道路後退が必要となると、その部分は道路にしなければならず、宅地として利用することは出来ません。その分、土地面積が少なくなりますので、十分注意して下さい。
建築基準法の道路に関する規定は、難しいことが多いので、事前に少し勉強されることをおすすめします。

⑤ ライフラインの整備状況(水道・ガス・電気)
水道、ガス、電気などのインフラが整備されているかどうかも重要です。都市ガスかプロパンガスか、水道は公営か私設か、排水は下水道か浄化槽かなど、生活の快適性や維持費に直結する情報です。
特に地方や郊外の物件では、インフラが未整備の場合もあります。たとえば、私設水道の場合は維持管理費がかかることがあり、将来的な負担になる可能性があります。
注意したいのは、前面道路が私道の場合です。公道の場合には、公設管があり、引込も問題ないことが多いですが、私道になると、私道の利用権もあり、前面道路に管があっても、管の施設者の許可がなければ利用出来ないことがありますので、十分に確認して下さい。
⑥ 管理費・修繕積立金(マンションの場合)
マンションを購入する場合は、毎月の管理費や修繕積立金の金額と使途を確認する必要があります。これらの費用は、共用部分の維持管理や将来的な大規模修繕に充てられるもので、金額が適正かどうかが重要です。
管理組合の運営状況や長期修繕計画の有無もチェックポイントです。管理が行き届いていないマンションは、資産価値が下がる可能性があるため注意が必要です。
注意したいのは、前所有者(売主)が滞納をしていないかどうかです。前所有者の滞納分は、新所有者にも支払義務があります。通常は、売買代金で滞納分を支払う筈ですが、そうはならずにトラブルとなっているケースもありますので、滞納が確認された場合には、十分注意して下さい。
⑦ 契約解除に関する事項(手付解除・違約金・ローン特約)
不動産売買契約を締結した後でも、やむを得ない事情により契約を解除しなければならないケースがあります。その際に重要になるのが、「契約解除に関する条項」です。重要事項説明書や売買契約書には、解除の条件や違約金の有無・金額などが明記されており、契約前に必ず確認しておくべきポイントです。
手付解除とは?
一般的な売買契約では、契約時に「手付金」を支払います。この手付金には、契約解除の権利を留保する意味があり、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を返還することで、一定期間内であれば一方的に契約を解除することが可能です。
ただし、この「手付解除」ができるのは、契約書に定められた期限までです。期限を過ぎると、手付解除はできず、解除には違約金が発生する可能性があります。重要事項説明書や契約書で、手付解除の期限がいつまでかを必ず確認しましょう。
違約解除と違約金
契約後に一方的に解除する場合、相手方に損害を与えることになるため、「違約解除」として違約金の支払いが発生します。違約金の額は契約書に明記されており、通常は売買代金の10〜20%程度に設定されていることが多いです。
たとえば、買主が自己都合で契約を解除した場合、支払った手付金を失うだけでなく、追加で違約金を請求されることもあります。解除の条件と違約金の金額・支払い方法は、契約前に必ず確認しておくべき重要事項です。
住宅ローンが通らなかった場合の「ローン特約」
初心者の方が見落としがちなのが、「住宅ローン特約(融資利用の特約)」です。これは、契約後に住宅ローンの審査が通らなかった場合、買主が無条件で契約を解除できるという特約です。
この特約があることで、ローン審査に落ちた場合でも違約金なしで契約を解除できるため、買主にとって非常に重要な保護条項となります。ただし、ローン特約にも以下のような条件が付されていることがあります:
- 指定された金融機関での審査に限る
- 一定の期限内に審査結果を提出する必要がある
- 買主の過失(書類不備や虚偽申告など)がある場合は適用されない
重要事項説明書や契約書で、ローン特約の有無・内容・適用条件を必ず確認しましょう。特に、フラット35や地方銀行など、複数の金融機関を検討している場合は、特約の対象金融機関が限定されていないか注意が必要です。
契約解除条項は「万が一の保険」
契約解除に関する条項は、できれば使いたくないものですが、万が一の事態に備える“保険”のような存在です。契約前にこれらの内容をしっかり理解しておくことで、予期せぬトラブルや損失を回避することができます。
特に初心者の方は、「契約したらもう後戻りできない」と思いがちですが、実際には解除の方法や条件が用意されています。重要事項説明書と契約書を照らし合わせながら、解除に関する条項を丁寧に確認することが、安心して契約に臨むための第一歩です。
⑧ 契約不適合責任の範囲と期間
売主が物件に隠れた欠陥(瑕疵)があった場合に責任を負う「瑕疵担保責任」についても確認が必要です。新築の場合は法律で10年間の保証が義務付けられていますが、中古物件では契約によって期間が短縮されることがあります。
また、対象となる瑕疵の範囲(雨漏り、シロアリ、構造上の欠陥など)も契約書に明記されているかを確認しましょう。トラブルを避けるためには、事前にインスペクション(建物診断)を受けるのも有効です。
⑨ 周辺環境(騒音・臭気・災害リスクなど)
物件そのものだけでなく、周辺環境も重要なチェックポイントです。近隣に工場や繁華街がある場合、騒音や臭気の問題が発生する可能性があります。また、ハザードマップで洪水や土砂災害のリスクを確認することも大切です。
重要事項説明書には、周辺環境に関する情報が記載されている場合がありますが、記載がない場合でも、現地を訪れて自分の目で確認することをおすすめします。
⑩ その他特記事項(再建築不可・借地権など)
最後に、重要事項説明書の「備考欄」や「特記事項」には、一般的な項目ではカバーしきれない重要な情報が記載されていることがあります。たとえば、再建築不可物件、借地権付き物件、文化財指定区域などです。
これらは資産価値や将来的な利用に大きな影響を与えるため、見落とさないように注意が必要です。特に「再建築不可」は、建物が老朽化しても建て替えができないため、購入後に大きな制約となります。
以上が、初心者の方が重要事項説明書で必ず確認すべき10のチェック項目です。
これらをしっかり理解しておくことで、不動産購入におけるリスクを大幅に減らすことができます。
次章では、実際に起きた失敗事例と、鑑定士としての視点から警告する“見落としがちなリスク”について詳しく解説していきます。
よくある失敗事例とその教訓
重要事項説明書をしっかり確認せずに契約してしまったことで、後悔につながった事例は少なくありません。ここでは、実際に起きた失敗例を紹介しながら、初心者が注意すべきポイントを具体的に解説します。
事例①|再建築不可の土地を購入してしまった
ある購入者は、価格の安さに惹かれて古家付きの土地を購入しました。しかし、契約後に建て替えをしようとしたところ、接道義務を満たしておらず「再建築不可」であることが判明。結果的に、建物の老朽化が進んでも新築できず、資産価値が大きく下がってしまいました。
教訓:重要事項説明書で「接道状況」「建築制限」を必ず確認し、再建築の可否を明確にしておくこと。
事例②|境界未確定の土地で隣地トラブルに発展
中古住宅を購入した方が、後に外構工事をしようとした際、隣地との境界が曖昧であることが判明。隣人との話し合いが難航し、境界確定のために測量士を入れて数十万円の費用が発生しました。
教訓:重要事項説明書に「境界確定済み」と記載があるかを確認し、測量図の有無もチェックすること。
事例③|未登記建物の存在により融資が通らなかった
物件の敷地内に小屋が建っていたが、登記されていない「未登記建物」だったため、金融機関の融資審査で問題となり、予定していたローンが通らなかったケースです。
教訓:重要事項説明書で「登記簿記載の建物」と現地の建物が一致しているかを確認すること。
事例④|共有持分の物件で売却時に揉めた
兄弟で共有名義になっている物件を購入した方が、将来的に売却しようとした際、他の共有者の同意が得られず、売却ができない状態に。結果的に資産が“凍結”されたような状態になってしまいました。
教訓:所有権が単独か共有かを確認し、共有の場合は将来的なリスクも考慮すること。
【コラム】鑑定士が警告する“見落としがちなリスク”
不動産鑑定士として、数多くの物件を評価してきた立場から、初心者が見落としがちなリスクをいくつか挙げておきます。
境界の不確定性
測量図がない、現地と登記が一致しないケースは非常に多く、後々のトラブルの火種になります。特に古い住宅地では、隣地との境界が曖昧なまま売買されていることもあります。
再建築不可の見落とし
接道要件を満たしていない土地は、建て替えができません。価格が安い物件ほど、再建築不可の可能性があるため、必ず「接道状況」を確認しましょう。
借地権の誤認
所有権だと思っていたら、実は借地権だったというケースもあります。借地権は更新料や地主との契約が必要になるため、将来的な負担が大きくなります。
法令制限の盲点
市街化調整区域や建築協定など、地域独自の制限がある場合、建築や用途に制限がかかることがあります。重要事項説明書だけでなく、役所での確認もおすすめです。
心理的瑕疵の扱い
事故物件など、心理的瑕疵がある場合は説明義務がありますが、曖昧な表現で済まされることもあります。気になる場合は、宅建士に具体的な説明を求めましょう。
これらの事例やリスクは、すべて「重要事項説明書をしっかり確認していれば防げた可能性がある」ものばかりです。
初心者の方こそ、専門家の視点を取り入れながら、慎重に確認することが大切です。
次章では、重要事項説明書を受け取った際に、どのような心構えで臨むべきか、そして質問の仕方について解説していきます。
説明を受ける際の心構えと質問の仕方
重要事項説明書は、宅地建物取引士が契約前に対面で説明することが法律で義務付けられています。とはいえ、説明の場では専門用語が多く、時間も限られているため、初心者の方がすべてを理解するのは難しいのが現実です。
そこで大切なのが、「聞く姿勢」と「質問する勇気」です。
わからないことは遠慮せずに質問する
「こんなこと聞いていいのかな…」と思う必要はありません。むしろ、わからないまま契約することの方がリスクです。宅建士は説明義務を負っているため、質問に丁寧に答える責任があります。
たとえば、以下のような質問は遠慮なくして構いません:
- 「この土地は再建築できますか?」
- 「境界は確定していますか?測量図はありますか?」
- 「この建物に抵当権は残っていますか?」
- 「管理費や修繕積立金は今後上がる予定はありますか?」
質問することで、説明の質も高まり、納得感のある契約につながります。
メモを取りながら確認する
説明を受ける際は、メモ帳やチェックリストを持参することをおすすめします。重要事項説明書は数ページにわたるため、口頭だけでは情報を整理しきれません。
特に以下の項目は、メモしておくと後で見返す際に役立ちます:
- 接道状況と再建築の可否
- 権利関係(所有権・抵当権など)
- 法令制限(用途地域・建ぺい率・容積率)
- 契約解除の条件と違約金
- 瑕疵担保責任の範囲と期間
また、説明後に家族や専門家と相談する際にも、メモがあるとスムーズです。
説明が不十分だと感じたら契約を急がない
もし説明が曖昧だったり、質問に対して納得のいく回答が得られなかった場合は、その場で契約を進める必要はありません。不動産購入は一度契約すると簡単には取り消せないため、慎重すぎるくらいでちょうど良いのです。
「契約を急がせる」「質問に答えない」「書類の整備が不十分」といった対応をする不動産会社には注意が必要です。信頼できる宅建士であれば、初心者の不安に寄り添いながら、丁寧に説明してくれるはずです。
重要事項説明書は、単なる“読み物”ではなく、契約の前提条件を確認するための対話のツールです。
初心者の方こそ、積極的に質問し、納得できるまで確認することが、後悔しない不動産購入への近道です。
信頼できる不動産会社・宅建士の見極め方
重要事項説明書の内容を正しく理解するためには、信頼できる不動産会社と宅地建物取引士(宅建士)との出会いが不可欠です。どんなに良い物件でも、説明が不十分だったり、誤解を招くような対応をされてしまえば、安心して契約することはできません。
ここでは、初心者でも見極めやすいポイントを紹介します。
説明が丁寧かどうか
信頼できる宅建士は、専門用語をかみ砕いて説明し、買主が納得するまで丁寧に対応してくれます。逆に、「これは専門的な話なので気にしなくていいですよ」といった曖昧な説明をする担当者には注意が必要です。
重要事項説明書の説明は、単なる“読み上げ”ではなく、買主が理解することが目的です。質問に対して誠実に答えてくれるかどうかが、信頼性の大きな判断材料になります。
質問への対応力
初心者の方が質問するのは当然のことです。その際に、「それは後で説明します」「契約書に書いてありますから」といった対応をされると、不安が残ります。
信頼できる宅建士は、質問に対して資料を提示したり、図解を用いて説明するなど、納得感のある対応をしてくれます。質問を歓迎する姿勢があるかどうかも、見極めのポイントです。
書類の整備状況
重要事項説明書や契約書が整っているかどうかも、会社の信頼性を測る指標です。誤字脱字が多かったり、説明資料が不十分だったりする場合は、業務の質に不安が残ります。
また、測量図や登記簿謄本、ハザードマップなどの補足資料を積極的に提示してくれる会社は、情報開示に前向きであり、信頼性が高い傾向があります。
信頼できる不動産会社・宅建士との出会いは、物件選び以上に重要です。
「この人なら任せられる」と思える担当者に出会えれば、重要事項説明書の内容も自然と理解が深まり、納得のいく契約につながります。
次章では、記事のまとめとして、重要事項説明書をどう活用すべきか、初心者が後悔しないための心構えを整理していきます。
まとめ:後悔しないために、重要事項説明書は“読む”ではなく“理解する”
不動産購入は、人生の中でも特に大きな決断のひとつです。そして、その契約の直前に交付される「重要事項説明書」は、購入者がリスクを見極め、納得して契約するための“最後の砦”とも言える存在です。
本記事で紹介した10のチェック項目は、初心者の方が最低限確認すべき内容ばかりです。これらを理解せずに契約してしまうと、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔する可能性が高まります。
重要事項説明書は、ただ“読む”だけでは意味がありません。「理解する」ことが何よりも大切です。わからないことは遠慮せずに質問し、納得できるまで説明を受けましょう。信頼できる宅建士や不動産会社であれば、初心者の不安に寄り添いながら、丁寧に対応してくれるはずです。
また、物件の価値やリスクを客観的に判断したい場合は、不動産鑑定士に相談するのも有効です。専門家の視点を取り入れることで、より安心して購入判断ができるようになります。
不動産購入で後悔しないために、重要事項説明書を「契約の前提条件を確認するための対話のツール」として活用してください。
そして、「わからないまま契約しない」ことを、ぜひ心に留めておいてください。
売買契約書について、気になる方は、下記のブログもご覧になって下さい。
