東京23区の樹冠被覆率と地価との関係を探る

樹冠被覆率という言葉をご存じでしょうか。

少し難しい言葉ですね。

ですが、言葉からある程度、意味は推測できるのではないでしょうか。

今回は、この樹冠被覆率と地価との関係について考察したいと思います。

以下に掲載する樹冠被覆率のデータは、東京23区のものになりますので、東京23区に関する考察となります。

目次

1.樹冠被覆率

(1)樹冠被覆率の意味

文言から、ある程度意味を推測できるかとは思われますが、樹冠被覆率の定義は以下のとおりです。一般財団法人環境イノベーション情報機構のホームページからの引用になります。

上から樹冠を地面に向かって水平に投影した時にできる陰影の面積が(全体)敷地に占める面積の割合。一般に、樹冠が大きければ大きいほど、その分、炭素固定、大気汚染物質の除去等の効果が高いことが見込まめる。このため、欧米を中心に都市緑地として重要なひとつである街路樹の樹冠被覆率を高めるような考え方が広がっている。その際、交通量が多いから大気汚染に強いものを選定するというような特定のものではなく、その土地の気候や風土に配慮した選定することが主流となっている。(2024年2月作成)”

簡単に言ってしまえば、樹冠被覆率が高いほど、緑が多いということになります。

(2)東京23の樹冠被覆率

この樹冠被覆率について、以下のようなデータがあります。
WEB東京民法(2024年8月25日号)に掲載されていたデータです。

東京23区における2013年(平成25年)と2022年(令和4年)のそれぞれの樹冠被覆率とその変動率になります。

ざっと見ますと、中央区、江東区、荒川区を除くと、変動率はマイナスとなっています。

樹冠被覆率が減少していることは、直感的には、理解は容易かと思われます。
宅地開発等により、緑が減少しているからでしょう。

その一方で、前記3区は、増加しています。

中央区と江東区は、大幅増加です。

今のところ、その原因は分かりませんが、分かりましたら、追記していきます。

2.地価と関係があるのか

では、樹冠被覆率と土地の価格には関係があるのか、以下考察をしていきたいと思います。

そもそもの話しになりますが、皆様はお住まいをお探しになる時に、自然環境を考慮に入れていますでしょうか。

もちろん、そういうこともあるかとは思いますが、ここでは東京23区になりますので、自然環境よりは交通利便性などが重視され、あまり自然環境は重視されないのではないか、というような気もします。

前置きが少し長くなりましたが、早速分析していきます。

(1)地価動向

先の樹冠被覆率のデータと合わせて、2013年(平成25年)と2022年(令和4年)の地価公示における平均価格とその変動率のデータを以下、掲載します。

①全用途

まず、全用途ですが、2013年から2022年の10年間において、23区全てで、平均価格は上昇となっています。

傾向としまして、千代田区がやや低迷していますが、都心区ほど変動率が高いことが分かります。

②住宅地

住宅地です。

先の全用途と同様に、都心区ほど、変動率は高くなっています。

全用途では、千代田区は低迷していましたが、住宅地では、上位に位置しています。

ですが、千代田区よりも平均価格の低い港区、中央区などよりも、変動率は低くなっています。

③商業地

商業地は、全用途とほぼ同様です。

(2)樹冠被覆率と地価との関連

それでは、全用途、住宅地、商業地の順に、樹冠被覆率との関連を調べていきます。

①全用途

下表を見て下さい。

平均価格の変動率と樹冠被覆率の変動率になります。

このままでは、分かりにくいので、回帰分析をします。

線形を見ますと右上がりになっており、データのばらつきからも、関連がありそうな感じもしますが、相関係数は0.1494となっており、相関関係はないということになります。

(2)住宅地

同様に、住宅地を見ていきます。

結果は、相関係数は0.1869であり、相関関係はないということになりますが、相関係数は、先の全用途よりも高くなっており、住宅地では、若干関連性が高いのではないか、ということが推察されます。

③商業地

最後に商業地です。

商業地については、相関係数は全用途よりも低くなっています。

相関係数が低いのに、分析してもあまり意味はないかもしれませんが、やはり、商業地では、自然環境が重視されていない、ということが裏付けられているのかもしれません。

3.まとめ

以上、地価動向と樹冠被覆率との関連性を探ってみましたが、残念ながら、回帰分析では、顕著な関連性は見られませんでした。

世界的な脱炭素の流れにおいて、樹冠被覆率を高めていくことは重要な社会的テーマだと思われ、不動産の価値も連動していくことが望ましいと思っております。

新たなデータ等を入手できましたら、再度分析をしていきたいです。

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この記事を書いた人

東京都中央区日本橋室町にて、不動産、不動産鑑定会社である堤不動産鑑定株式会社を経営しています。
会社ホームページはこちらです。
https://www.tappraisal.co.jp/

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