マンションの鑑定評価料(鑑定報酬)について、解説をします。

マンションの鑑定評価について、お問合せをいただくことが、増えてきました。

誤解を与えないように、初めに用語の定義をさせていただきますが、本ブログでいうマンションとは、一棟の分譲マンションの内の一部屋、とします。

一棟全体のことを言っている訳ではないので、ご注意下さい。

新築、中古ともに、マンション価格は高騰しておりますし、生活スタイルとして、マンションに住むことが、メジャーになってきたこともあるのかと考えています。

私自身は、長く一軒家に住んでいたこともあり、立地の良さ以外に、今の所、マンションの良さを感じないのですが、知人の話しなどを聞きますと、マンションに住む方が楽だ、というようなことも聞きます。

さて、マンションの鑑定について話しを戻しますが、鑑定のお問合せに当たり、鑑定評価料(鑑定報酬)は、最大の関心事であると思われますので、マンションの評価料について、少し詳しく解説をします。

戸建住宅や賃貸アパートなどとは異なり、マンションには、マンション特有の評価上の特徴があり、その特徴がゆえに、あまり評価料は安くは出来ないことをご理解いただけましたら嬉しく思います。

この後詳しく解説しますが、マンションの鑑定評価は少し手数がかかるのです。

マンションも含めた他案件の鑑定評価料については、こちらにまとめておりますので、よければ参考にして下さい。

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目次

1.マンションの鑑定評価の特徴

まず、マンションの鑑定評価の特徴について、ご理解いただきたく、初めに解説致します。

特徴としては、2つあります。

(1)3手法を適用することが可能

不動産の鑑定評価では、価格を求める場合、原価法、取引事例比較法、収益還元法の3手法を適用します。

3手法を適用しますと、書かせていただきましたが、マンション以外の物件では、通常3手法全てを適用することは出来ず、2手法となることが多いです

見やすいように、以下、表でまとめます。

案件類型手法
土地更地取引事例比較法、収益還元法
戸建住宅自用の建物及びその敷地原価法、収益還元法
戸建住宅(賃貸している場合)貸家及びその敷地原価法、収益還元法
賃貸アパート貸家及びその敷地原価法、収益還元法
貸しビル貸家及びその敷地原価法、収益還元法

手法の欄を見ていただきたいのですが、いずれも2手法となっています。

例えば更地の場合は、取引事例比較法と収益還元法となっています。

3手法のうち、原価法は記載されていません。

原価法は、どのような手法かというと、現時点において、新しく造ることを想定して、経年分の減価をさせる手法です。

市街地の土地などは、最初からありますので、新しく造るということは想定出来ませんので、適用しません。

更地以外は、いずれも原価法と収益還元法の2手法となっています。

今度は、取引事例比較法を適用していません。

取引事例比較法は、名前のとおりですが、比較可能な事例を集めて、事例と評価する不動産を比較をすることによって、価格を求める手法です。

例えば、駅から距離、道路幅員、容積率、環境要因などを比較します。

土地だけの場合には、いいのですが、土地に建物が加わりますと、比較可能な事例を収集することは、困難なことが多いため、適用は断念せざるを得ません。

とろこが、マンションは、3手法を適用することが可能なのです。

マンションは、先の例でいうと、戸建住宅、賃貸アパート、貸しビルと同じグループになるということは理解いただけますでしょうか。(厳密にいいますと、本当は、少し異なりますが。これはこの後説明致します。)

土地と建物ということです。

そうしますと、まず、原価法と収益還元法の2手法は適用できることになります。

更に、取引事例比較法ですが、先の戸建住宅や貸しビルなどとは異なり、マンションは比較可能な取引事例を収集することが可能です。

極端な場合、同じマンション内の事例があったりもします。

従いまして、マンション以外の案件は2手法で済むことが多いのに対し、マンションは3手法適用することが出来ますので、この分だけ、手数を要し、鑑定料は、あまり安く出来ない、ということになります。

だったら、2手法や1手法でいいので、安くして欲しい、というお考えもあるかもしれませんが、正式な鑑定評価書は、不動産鑑定評価基準に則る必要がありますので、原則3手法を適用する必要があります。

少し反れますが、正式な鑑定評価でなければ、3手法を適用する必要はないので、評価料を安く出来ることがあります。

これについては、別にまとめさせていただいておりますので、ご参照下さい。

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(2)原価法が通常と異なる

もう一つですが、原価法が通常の場合と異なります。

先の例でいいますと、貸しビルでしたら、土地と建物の価格を求めたら、それで原価法は終了ですが、マンションの場合には、一棟全体の価格を求めただけでは終わりません。

これはお分かりだと思いますが、先にマンションの定義をさせていただきましたが、評価をするのは、一棟全体の内の1部屋です。

ですので、一棟全体の価格を求めた後に、1部屋の価格を求める為の調整が必要となります。

具体的にいいますと、階層による格差と階層内での位置による格差を反映させることになります。

マンションは、高層階になるほど、眺望もよくなり、価格も高くなります。

同一の階層内でも、採光の良し悪し、角部屋かどうか、エレベーターの位置などにより、価格も変わってきます。

これらを反映させる為の調整となります。

この分だけ、追加の作業が必要となりますため、手数を要することになります。

なお、この調整が、マンションによって大きく異なる為、一概にマンションの鑑定料はいくらと言い難い要因となっています。

以下、具体的に説明します。

①土地が大きい

土地が大きくなるほど、調査する事項も増えます。

また、下記②、③とも関連してくるのですが、土地が大きいほど、マンションの戸数は多くなりますし、場合によっては、敷地内に複数の一棟のマンションが建っている場合があります。

これについては、以下で説明致します。

②戸数が多い

戸数が多いほど、先に説明させていただきましたが、階層による格差と、階層内の位置による格差の査定が大変になってきます。

単純に、戸数が倍になったら手数が倍になる、というものではないですが、戸数が増えるほど、計算が大変になってきます。

また、戸数がそれほど多くないとしても、高階層の場合には、低階層の一棟のマンションよりも、計算は面倒になります。

タワーマンションがそうですね。

③敷地内に複数のマンションが建っている

これは、不動産鑑定的には、非常に悩ましい問題となります。

例えば、敷地内に2棟の一棟のマンションが建っていたとしましょう。

復習ですが、マンションの原価法は、土地価格と一棟の建物価格を価格を求めて、これを調整して、1部屋の価格を求めます。

この時、2棟のマンションがあったら、土地価格をそのまま合算する訳にはいきません。

土地全体の価格から、評価する一棟のマンションに帰属する分だけに案分する必要があります。

これは、使用容積率などによって、案分すればいいのですが、もう一つ、考えなければいけないことがあります。

2棟のマンションが同じような立地であればいいのですが、そうでない場合に、単純に容積率だけによって案分していいのか、ということになります。

具体的にいいますと、一方が、駅に近い、眺望に優れる等がある場合です。

勿論、鑑定評価は可能なのですが、検討しなければいけないことが増えることは、ご理解いただきたいところです。

2.マンションの鑑定評価料(鑑定報酬)

マンションの鑑定評価料(鑑定報酬)は、弊社の場合、300,000円(税別)~とさせていただいております。

では、この300,000円(税別)は、どのようなマンションになるのか、というと、下記の条件となります。

  • 総戸数が100戸程度
  • 階層が10階程度
  • 敷地内に複数の一棟のマンションが建っていない(一棟だけ)

上記条件に当てはまらない場合には、鑑定評価料は、申し訳ありませんが、追加とさせていただいております。

ですが、何万㎡という膨大な敷地に、何棟もの一棟のマンションが建っている、というような極端な場合を除けば、通常、上限で400,000円(税別)になるものと、お考えいだければと思います。

3.まとめ

本ブログを書いていて思ったのですが、マンションは、一般的に、規模が大きいほど、管理費・修繕積立金が割安となり、共用部の充実も図れ、更に、土地が大きい場合には、緑地や公園なども整備でき、魅力的なマンションとなります。

その一方で、鑑定としては、大きくなるほど、手数を要する為、鑑定評価料も高くなってしまうというマイナス要因となってます。

こればかりは、いかんともしがたいところですので、ご理解いただきたいです。

最後に、簡易的な評価の場合には、通常、取引事例比較法しか適用しないことが多く、原価法は適用ませんので、先にご説明させていただいた手数は発生しません。

評価目的により、正式な鑑定評価が必要なのか、そうでなくてもいいのかご説明しますので、お悩みの際には、お気軽にお問合せ下さい。

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