国土利用計画法は、聞いたことはありますでしょうか。
更に、公有地の拡大の推進に関する法律となると、聞いたことすらない、という方もいらっしゃるかもしれません。
以下、国土利用計画法は「国土法」、公有地の拡大の推進に関する法律は、「公拡法」と省略します。
タイトルに届け出と記載しましたが、土地取引の際に、国土法、公拡法ともに、該当する場合には、届け出が必要となります。
どのような場合に該当するかですが、それぞれ次のとおりです。
国土法は、市街化区域では2,000㎡以上、市街化区域以外の都市計画区域では5,000㎡、都市計画区域以外では10,000㎡以上の取引をする場合に、買主の届出が必要となります。
公拡法では、少し複雑になるので、後程詳述しますが、例えば、市街化区域内の都市計画施設で、200㎡以上の取引をする場合に売主(土地所有者)の届出が必要となります。
国土法と公拡法では、届出をする人が異なるのも、少し複雑ですね。
以下、それぞれ解説していきます。
1.国土利用計画法(国土法)
まず、国土法の届出について、説明します。
概要としましては、(1)の契約と(2)の規模の両方に該当する場合に、届け出が必要となります。
(1)届出を要する契約
土地取引に係る契約(土地に関する権利の移転又は設定をする契約。予約を含む。)をしたときは、届出が必要です。
土地取引に係る契約とは、以下のとおりです。
売買、入札、保留地処分(区画整理)、交換、営業譲渡、譲渡担保、代物弁済、現物出資、共有持分の譲渡、地上権・賃借権の設定又は譲渡、予約完結権・買戻権の譲渡、信託受益権の譲渡、地位譲渡、第三者のためにする契約等(これらの取引の予約である場合も含む。)
賃借権の設定又は譲渡、とありますので、借地権も該当することになります。
(2)取引の規模
取引の規模は以下のとおりとなります。
(1)市街化区域 | 2,000㎡以上 |
(2)(1)を除く都市計画区域 | 5,000㎡以上(主に、市街化調整区域及び都市計画非線引区域) |
(3)都市計画区域以外の区域 | 10,000㎡以上 |
(3)届出者及び届出先について
土地の買主は、契約を締結した日から起算して2週間以内に土地の所在する区市町村長を経由して知事に届けます。
買主が、届出ることに注意して下さい。
この後、説明する公拡法と異なります。
(4)届出事項と届出書に添付する書類
届出事項と届出書に添付する書類は、以下のとおりです。
- 契約当事者の氏名・住所等
- 契約締結年月日
- 土地の所在地及び面積
- 土地に関する権利の種別及び内容
- 土地の利用目的
- 対価の額等
(1)契約書の写し | 土地売買等の契約書の写し又はこれに代わるその他の書類 |
(2)位置図 | 土地の位置を明らかにした図面 |
(3)周辺状況図(住宅案内図等) | 土地及び付近の状況を明らかにした図面 |
(4)平面図(公図等) | 土地の形状を明らかにした図面 |
(5)実測図 | 土地家屋調査士等による実測求積図面(実測面積による売買の場合に添付する。) |
(5)届出をした後について
届出を受けた知事は、土地の利用目的について審査を行い、その利用目的が公表されている土地利用に関する計画に適しない場合には、届け出てから原則として3週間以内に利用目的の変更を勧告することがあります。
勧告に従わない場合には、その旨及びその勧告の内容を公表することがあります。
また、土地の利用目的について、適正かつ合理的な土地利用を図るため、必要な助言をすることがあります。
勧告や助言をしない場合は、不勧告通知は行いません。
なお、事後届出制においては、取引価格についての指導、勧告等をすることはありません。
(6)補足
なお、監視区域、注視区域、規制区域に指定されると、上記とは異なってきます。
監視区域、注視区域では、事前届出制となり、規制区域では、許可制となります。
注視区域は、平成10年の国土法の改正により創設されて以来、指定された区域はなく、規制区域は、国土法の施行依頼、指定された区域はありません。
一方で、監視区域は、現在、小笠原に指定されています。
指定期間は、令和2年1月5日~令和7年1月4日となっていますので、もう直ぐ指定期間は終了します。
2.公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)
次に、公拡法について、説明します。
公拡法は、少し複雑ですの、要点を絞って、説明したいと思います。
(1)届出を要する契約
公拡法は、土地を有償で譲渡する場合に届出を要します。
ここでいう有償とは、通常の売買に加えて、代物弁済、交換なども該当します。
寄付、贈与、収用などの場合には、該当しません。
また、借地権の譲渡は、所有権の移転を伴いませんので、届出は不要となります。
国土法とは、少し異なりますので、注意が必要です。
(2)取引の規模
ここが少し複雑になりますが、下表を見て下さい。
3か所、赤枠で囲みましたが、この3か所について、以下、解説していきます。
①都市計画施設、都市計画区域内に所在する土地
都市計画施設とは、都市計画法で定められた道路、公園、上下水道等が該当します。
例えば、道路を例にしますと、道路自体は、国、市、区などが所有していますので、現在ある道路を取引するということではなく、これから道路として整備する土地(都市計画道路)が該当します。
都市計画区域内に所在土地とは、道路法による道路区域、都市公園法による都市公園を設置する区域、河川法による河川予定などが該当します。
これらの土地については、200㎡以上の土地が、届出の対象となります。
先に都市計画道路を例に上げましたが、土地全体が300㎡で、都市計画道路部分が、300㎡のうち、30㎡だとしても、土地全体が、200㎡以上なので、届出の対象となります。
ここは、注意が必要です。
②市街化区域
市街化区域に存する土地を取引する場合には、その土地の面積が5,000㎡以上の場合に、届出の対象となります。
③非線引き都市計画区域
非線引き都市計画では、10,000㎡の場合に、届出の対象となります。
④市街化調整区域、都市計画区域外
赤線では囲っていませんが、市街化調整区域では、①の都市計画施設、都市計画区域内の土地を除けば、届出は不要となります。
また、都市計画区域外では、①のうちの都市計画施設を除けば、届出は不要となります。
(3)届出者及び届出先について
届出者は、譲渡者(土地所有者)になります。
契約予定日の3週間前までに届出をする必要があります。
こちらも、事後の国土法とは異なります。
町村の区域内に所在する場合にあっては当該町村の長を経由して都道府県知事に、当該土地が市の区域内に所在する場合にあっては当該市の長に届け出ます。
(4)届出事項と届出書に添付する書類
届出事項は、以下のとおりです。
- 当該土地の所在及び面積
- 当該土地の譲渡予定価額
- 当該土地を譲り渡そう とする相手方
- その他主務省令で定める事項
届出書に添付する書類は、下記になります。
①位置図 | 縮尺5万分の1以上の地形図:市町村管内図 |
②周辺状況図 | 住宅地図で可 |
③形状平面図 | 公図又は実測図 |
(5)届出をした後について
買取りを希望する地方公共団体等があるときは、届出のあった日から3週間以内に連絡があり、買い取りの協議を行うことになります。
一方、買取りを希望する地方公共団体等がないときは、その旨の通知がされます。
通知がなければ、その後は、通常の売買手続きに戻ることが出来ます。
買い取りの希望があった場合には、買い取りに向けて、協議を行うことになりますが、この協議が不成立となれば、通常の売買を行うことが出来ます。
3.まとめ
国土法と公拡法の届出について、整理をさせていただきました。
初めて不動産取引をされる方でしたら、恐らくご存じのない方も多くいらっしゃるかと思われ、不動産売買が面倒に感じられたかもしれません。
ですが、通常は、そんなに心配する必要はありません。
不動産取引の際には、不動産業者(仲介業者)を通して行われることが、多いと思いますが、その際の重要事項説明で、国土法と公拡法に該当する場合には、その説明がなされるからです。
気の利いた業者でしたら、必要書類や具体の手続も説明してくれるでしょう。
反対に、ただ該当します、という説明だけでしたら、困りますが。
そうしますと、注意しなければいけないのは、業者を通さずに直接に売買をした場合です。
このような時には、誰も教えてはくれませんので、本ブログを読まれた方は、頭の片隅に留め置いてもらい、このようなケースに直面した場合には、ご活用いただけたらと思います。
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