都市計画道路という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
不動産に関連する仕事をされている方でしたら、当然ご存じでしょう。
また、宅建を受験されたことがある方も、きっとご存じのことと思われます。
言葉どおりで、都市計画(都市計画法)で定められた道路という意味ですが、通常、都市計画道路という時には、これから整備される道路のことを意味していることが多いです。
都市計画道路に指定され、道路整備が完了しても、その道路は都市計画道路に違いはありませんが、完成している場合には、その道路に対して、敢えて、都市計画道路という言うことは少ないと思います。
これから整備される訳ですから、現状の道路が拡幅されることによって整備される場合には、イメージも湧きやすいですが、全く道路がないような場所に都市計画道路の計画があったりすることも多く、こんな所に道路が出来るのか、と驚かれることもあるでしょう。
不動産に馴染みのない方が、都市計画道路に直面する場合として想定されるのは、購入しようとしている土地、土地付建物が、都市計画道路予定地を含んでいる場合でしょうか。
購入をする場合でなくても、古くからお住まいの家の土地が、都市計画道路に指定されている、ということもあり得ます。
以下、都市計画道路について、解説するとともに、その注意点等についても触れていきます。

1.都市計画道路とは
先に、簡単に触れましたが、都市計画道路とは、都市計画法によって定められた道路です。
都市施設の一種で、都市施設には、他に、公園、河川(堤防)などがあります。
幅員20m、30m等の幹線道路となっていることが多いです。
都市計画道路に該当するかどうかは、市区町村役場の都市計画課にて、確認することが出来ます。
例えば、調べている土地がまるまる都市計画道路予定地に該当する場合を除き、通常は、土地の一部が都市計画道路予定地に該当することが多いです。
この場合に、役所で調査すると、例えば、”現在の道路から1.5mまでの範囲が都市計画道路予定地となります”、などの回答となります。
ここで注意していただきたいのは、先の例で言いますと、1.5mの詳細です。
役所では、図面をもとに回答をしてくれますが、都市計画道路事業の進行状況によっては、現地での測量が行われていないこともあり得ます。
そうすると、図面からの概測になりますので、将来的に誤差が生じる可能性があります。
そこで、先の例で云うと、1.5mという回答であったとしても、詳細は、都市計画道路予定地は1.0mの範囲内であるが、誤差を考慮して、1.5mということがあります。
ですので、単に、どの程度都市計画道路予定地に該当するかだけではなく、誤差も含んでいるのかどうかも、確認する必要があります。
また、この後、説明致しますが、計画決定段階か、事業決定段階で、規制なども異なるので、これについても合わせて確認する必要があります。

2.都市計画道路に該当するとどうなるか
(1)具体例
よくあるケースとしては、敷地前面の道路が都市計画道路に指定されており、道路拡幅が必要で、敷地の一部が都市計画道路に該当する場合だと思われます。
ここでは、土地の購入を検討しており、購入予定の土地の一部が都市計画道路に該当する場合を例に説明します。
図示すると、以下のようになります。

まず、図の左側を見ていただきたいのですが、200㎡の土地があり、道路幅員が10mだったとします。
この道路が、20mの都市計画道路に指定されており、対象地側に5mの後退が必要だったとします。
そうすると、全体で200㎡あった土地のうち、50㎡が都市計画道路予定地となります。
この道路予定地は、どうなるのでしょうか。
結論としましては、行政にて、買いっとってもらえますので、心配は無用です。
(2)規制の内容
ここで少し考えていただきたいのですが、先の都市計画道路予定地ですが、いずれ買い取ってもらえるとして、それまではどうなるのでしょうか。
これは、計画決定の段階か、事業決定の段階かで異なってきます。
以下、それぞれについて説明します。
①計画決定の段階
計画決定の段階では、名前のとおり、計画として決まっているだけで、実際に事業が行われている訳ではありません。
また、いつ事業が行われるのかは、未定の場合も多いです。
従って、このような段階で、あまり厳しい規制を設けますと、土地所有者は大きな不利益を被ることになり、一方で、都市計画道路事業を行う側からしますと、いずれ道路になる土地に、高層の建物などは建てて欲しくはありません。
よって、計画決定の段階では、木造、鉄骨造等で、地階がなく、3階且つ高さ10m以下の建物でしたら、都市計画道路予定地にも建物を建てることが出来ます。
そうしますと、住宅地で、木造2階の建物を建てる場合には、実質的には、都市計画道路の影響は受けないことになります。
②事業決定の段階
事業決定の段階では、実際に事業が行われているのですから、一部の例外を除き、都市計画道路予定地に建物を建てることが出来ません。
これは当たり前ですね。
事業を実施しており、これから道路になる土地に、建物を建てられても困りますので。

3.都市計画道路は、プラスかマイナスか
先の例でいいますと、敷地の一部が道路予定地になりますので、都市計画道路予定地を含むことは、マイナス要因のように思われるかもしれません。
ですが、道路予定地は、いずれ買い上げてもらえますので、道路予定地を含むからと云って、必ずしも減価となる訳ではありません。
一方で、将来的には、道路が拡幅することから、プラス要因ともいえます。
では、どのような場合に減価となるのでしょうか。
少し難しい言い方になりますが、理論的にいいますと、鑑定用語になりますが、最有効使用が出来ない場合に、減価要因となります。
例えば、高容積の地域で、高層のビルが建ち並ぶ商業地域だった場合に、都市計画道路予定地は、木造、鉄骨造の3階建の建物しか建築できない為、容積率を消費出来ない場合が考えられます。
また、道路予定地を買い取ってもらえると云っても、残った土地で有効利用出来ない場合にも、減価となるでしょう。
以上により、都市計画道路の影響は、個別の土地の状況によって、異なってきます。

4.都市計画道路がプラスとなる場合
前記では、結果的に、減価となる場合について、考察しましたが、プラスとなる場合は、あるのでしょうか。
実は、あるのです。
言葉だけだと難しいので、数値も使って説明します。
先の図を見ていただきたいのですが、容積率が200%だったとします。
土地は、200㎡ですので、建築可能な延床面積は、400㎡となります。
ですので、延床面積400㎡の建物を、都市計画道路予定地外に建てます。
都市計画道路事業が進行して、道路予定地が買収されると、土地面積は、150㎡となります。
容積率が200%ですから、150㎡の土地には、本来であれば延床面積300㎡の建物しか建てられませんが、400㎡の建物が建っていることになります。一見、容積率オーバーで違反のように思えます。
この状態を既存不適格といいます。
建築した時には、適法であり、その後、法律の変化により、法律を満たさなくなった場合のことを言います。
これは、違反ではありません。
よって、道路予定地部分は、買ってもらえ、残った土地には、本来建てられない規模の建物が存しているということになり、これはプラスとなります。
このように、必ずしもプラスになるとは限りませんが、都市計画道路の影響は、それぞれのケース毎に、検討することが重要になってきます。

5.まとめ
以上、都市計画道路について説明しました。
都市計画道路予定地を含む、となると驚かれるかもしれませんが、不動産の実務を行っている方でしたら、よくある話しですなので、それ程、驚くことではありません。
説明させていただきましたとおり、都市計画道路予定を含むということに驚くのではなく、それがプラスになるのかマイナスになるのか、また、道路予定地を含むことによる影響を踏まえた有効利用を積極的に考え欲しいです。
なお、都市計画道路予定地を含む土地を売買する場合には、公有地の拡大の推進に関する法律の届け出が必要になる場合がありますので、ご注意下さい。
