「都市計画区域外」といっても、聞きなれない方も多いかとは思います。
不動産や建築にかかわりのある方でしたら、容易に理解いただけるかと思いますが、そうではない方たちの為に、解説をしたいと思います。
「都市計画法」に関することですので、まず、都市計画法について、簡単に解説致します。
1.都市計画法
都市計画法では、日本の国土を「都市計画区域」と「準都市計画区域」に区分します。
「都市計画区域」と「準都市計画区域」は、以下のとおり定義されています。
都市計画区域 | 一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域。 市街化区域と市街化調整区域の区分を定めることが出来る |
準都市計画区域 | 都市計画区域の指定がない区域であっても、相当数の建築物等の建築又はこれらの敷地の造成が現に行われていたり、または将来行われると見込まれる区域で、そのまま土地利用を整序し、又は環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域を、準都市計画区域として指定することができる |
都市計画区域は、街づくりを行っていく地域、一方、準都市計画区域は、街づくりを制限をする地域、とイメージしてもらえばいいかと思います。
次に、「都市計画区域外」です。
全ての土地を「都市計画区域」と「準都市計画区域」に指定する訳ではありませんので、どちらにも指定されなかった地域が、「都市計画区域外」となります。
日本の国土面積は、国土地理院によると、令和5年10月1日時点で377,974.79㎢となっています。
一方、都市計画区域と準都市計画区域ですが、国土交通省の令和5年都市計画現況調査によると、それぞれ102,850.62㎢、661.52㎢となっており、合計で103,512.14㎢となります。
そうしますと、日本の国土の約27.4%(103,512.14㎢÷377,974.79㎢)が、都市計画区域か準都市計画区域となっており、約72.6%が、都市計画区域外となります。
ここで、再度、用語も交えて整理をしたいと思います。
まず、都市計画区域と準都市計画区域を定めます。
どちらにも指定されなかった地域が、都市計画区域外となります。
上図の緑色部分です。
都市計画区域は、市街化区域と市街化調整区域を指定することが出来ます。これを線引きといいます。
指定しなくてもいいので、指定しない場合には、非線引き都市計画区域となります。
上図の都市計画区域の白色の部分になります。
市街化区域と市街化調整区域は、以下のような区域です。
市街化区域 | すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域 |
市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域 |
2.都市計画区域外の規制
それでは、都市計画区域外について、説明をしていきたいと思います。
(1)都市計画区域外で建築は出来るのか
通常、土地を購入する場合には、家を建てるとか、共同住宅、店舗、工場、倉庫などの建物を建てるなどの目的があるかと思います。
このような観点で、都市計画区域外では、どのような規制があるのでしょうか。
先に記載しましたが、都市計画区域は、一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域です。
一方、準都市計画区域は、相当数の建築物等の建築又はこれらの敷地の造成が現に行われていたり、または将来行われると見込まれる区域となっています。
簡単に言ってしまうと、両地域は、程度の差はありますが、都市として整備していく地域と言えますの、建物は建てられそうですね。
確かに、建物は建てられますが、逆に言うと、建物が建てられるということは、色々な規制を受けることになります。
既成の主なものは、都市計画法と建築基準法になります。
一言で言えば、建物は建てられますが、好きなものを、勝手に建てることは出来ない、ということになります。
なお、都市計画区域の市街化調整区域は、定義のとおり、市街化を抑制すべき区域ですので、例外はありますが、建物の建築は困難です。
市街化調整区域については、別の機会にまとめたいと思います。
では、都市計画区域外は、建物が建てられないのか、というとそんなことはありません。
むしろ、都市計画区域や準都市計画区域よりも、自由に建てられる場合が多いかと思います。
都市計画区域と準都市計画区域が、都市として整備していく地域と述べましたが、都市計画区域外は、都市として整備をしない地域、という言い方も出来ます。
ですが、市街化調整区域とは異なり、市街化を抑制するというような決まりはないので、都市計画区域や準都市計画区域よりも、既成は少ない為、自由に建物を建てることが出来ます。
例えば、都市計画区域では、建築基準法の集団規定により、建築基準法の道路に接する必要がありますが、都市計画区域外では、その規定は適用されません。
従って、都市計画区域外は、都市計画区域や準都市計画区域よりも規制が少なく、自由に建物を建てられる可能性が高い、ということになります。
(2)都市計画区域外の注意点
都市計画区域外の土地は、都市計画区域や準都市計画区域よりも規制が少ない、ということが分かりました。
そうすると、都市計画区域外の土地の方がいいのではないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、そうはならないのです。
勿論、土地利用の目的によっては、都市計画区域外の方が望ましい、ということもあり得ますが、一般的には、そうはらなないのです。
そもそも都市計画区域外ということは、都市と整備をしていくことを想定していないエリアになりますので、都市からは外れた地域になります。
誤解を恐れず言いますと、田舎ということになります。田舎どころか、山ということもあり得ます。
仮に、家を建てて、都市計画区域外に住むことを想定してみましょう。
都市計画法や建築基準法の規制は緩いので、法的には、建物を建てられるとします。
ですが、家を建てる際には、法律だけクリアすればいいということにはなりません。
水道、下水道などのインフラ整備も検討しなければいけません。
都市計画区域外では、これらのインフラ設備がないことが多いのです。
水道であれば、井戸でもいいですが、下水道となると、浄化槽を設置して、その排水先が必要となります。
近くに、排水先となる川などがない場合には、現実的に、暮らしていくことが困難になります。
3.まとめ
都市計画区域外の土地は、建物の建築に当たっては、規制が緩く、都市から外れていることから、土地の価格も安いです。
土地価格が安いのは、メリットですが、デメリットとして、インフラ整備が十分にされていないことが多いので、排水を可能にする為に、費用が嵩んだり、そもそも生活に不便ということもあります。
なお、最後に注意していただきたいのですが、一般的には、都市計画区域外の規制は緩いのですが、自然公園法などの規制がある場合などもあり、これにより建築そのものが規制されたり、制限を受けることもあるので、他の規制が適用されるのかどうかも調べる必要があります。
たまにテレビで、電気などのない地域で暮らしている方達を拝見しますが、そういった生活を望まれる方々には、都市計画区域外の物件は、好まれるのかもしれません。
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