借地の上に建物を建ててお住まいの方、反対に、土地を借地人に貸している方は多いかと思います。
このような場合、当たり前ですが、土地賃貸借契約を締結していることになります。
少しくどい言い方になるかもしれませんが、賃貸借契約を締結しているのですから、賃貸借契約書があることになります。
ですが、賃貸借契約書がないことがあるのです。
それも、決して稀なケースではありません。
建物の賃貸借契約(アパートやマンションの一室)から想像すると、契約書がないなんてことがあるのか、と思われるかもしれませんが、土地の賃貸借契約の場合には、契約書がないことは、珍しいことではありません。
勿論、建物の賃貸であって、建物の賃貸借契約書がないこともあるかと思いますが、私は、このようなケースを見たことはありません。
なぜ、このようなことが起こりうるのでしょうか。
その原因と契約書がない場合の問題点、その解決方法も提案致します。
1.賃貸借契約書がない理由
賃貸借契約書がない、というと大問題のように思われるかもしれませんが(勿論、問題になることもあり得ますが)、そんなことはありません。
契約自体は、口頭でも有効だからです。
ですので、契約書がないこと自体は、問題ではありません。
ここで一つ整理させていただきますが、ここで云う、契約書がないというのは、契約当初に口頭で契約をしており、そもそも契約書がない場合を意味しています。
契約書を交わしましたが、それを紛失してしまった、というのとは、異なりますので、注意して下さい。
(このような場合の対応方法については、別の機会に説明をさせていただきたいと思います。)
契約書がない原因は、いくつか考えられますが、一番多い理由は、昔の契約に多いということが挙げられます。
なお、昔というのは、戦前、及び、戦後しばらくという感じです。
これは、推測ですが、戦前、戦後間もなくの頃は、今と違って、不動産の価格も今ほど高額ではなかった為、不動産に対する認識も、今とはかなり異なっていたのだと思われます。
都心の大規模な土地の賃貸借契約であれば、地代もそれなりの金額になるので、契約書を作成するのが普通だったかもしれませんが、規模のそれ程大きくない住宅用の地代は、今と比較するとずっと低廉な水準にあったと思いますので、きちんと契約書を交わす、という認識は、あまりなかったのではないかと思われます。
更に考えられる理由として、、先の理由と重なるところもありますが、当初は、親族間での貸し借りだったので、契約書は交わさなかったけれども、相続などで代が変わり、今ではほとんど他人のような関係になってしまった、ということも考えられます。
2.賃貸借契約書がない場合の問題点
問題点は、色々と上げられますが、賃貸借当事者が、存命であればいいですが、相続などにより当事者が変わってしまうことでしょう。
借地契約は、通常、地代、契約期間、使用目的、一時金の有無及び額、更新料の有無等を定めますが、口頭だと、これらがあいまいになりがちです。
地代は、毎月支払っている場合には、その支払額から客観的に判明しますが、それ以外は、当事者しか分かりません。
また、借地契約は、長期に及ぶことから、当事者であっても、契約当時のことは忘れているかもしれません。
例えば、使用目的が分からなければ、借地人が、地主に建て替えのお願いをする際、新たに建てる建物が契約目的の範囲内なのか、そうでないのか分かりません。
使用目的の範囲内であれば、建替承諾で済みますが、そうでなければ、条件変更承諾の手続きが必要となります。
ですので、後々、色々なトラブルの原因になる可能性があります。
また、更新料の有無も問題になりますが、契約書があれば、問題は回避できます。
以上、契約書がなくても、借地契約自体は有効ですが、後々のトラブルの種を抱えていることになります。
3.解決方法
解決方法です。
実は、解決方法自体は、簡単です。
契約書を作成すればいいだけですので。
文字として書くのは簡単ですが、これがすんなりといくとは限りません。
契約は、借地人と地主の双方が納得する必要がありますから、双方の合意が得られなければ、契約書を作成することはできません。
少し楽観的に考えれば、契約書がない場合よりも、あった方が、お互いに後々のトラブルを回避できますので、双方の合意を得られやすいようにも思いますが、こればかりは、交渉事ですので、実際に行動してみなければ分かりません。
借地人と地主の関係が、良好ではない場合などもありますので。
タイミングとしては、更新契約時や売買時が考えられます。
売買時であれば、不動産会社に仲介をお願いしているのであれば、不動産会社に間に入ってもらって、作成をお願いすることも考えられます。
借地権、あるいは、底地を売却時に、買い手が見つかったけれども、買い手側の売買に当たっての条件が、契約書の締結(書面化)とした場合、契約書を締結できなければ、話が流れてしまうことも考えられます。
4.まとめ
土地賃貸借契約において、賃貸借契約書がない場合について、解説させていだきました。
契約書が無いこと自体は問題ではありませんが、後々、トラブルになる可能性を有していることには留意が必要です。
現実には、難しいところもあるかもしれませんが、借地人と地主の関係を良好に保つことが、トラブル回避の一つの方法だと思います。
なお、借地権、底地、地代については、こちらで解説していますので、よければ参考にして下さい。
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